【激甚化する自然災害に備える(7)】防災教育のアップデート①自然災害理解のための地学教育からSTEM教育まで

滋賀大学教授 藤岡達也

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 災害は、大きく自然災害と事故災害に分けることができる。自然災害につながる自然現象には、地震、津波、火山噴火、豪雨、高潮、豪雪、地すべり、土石流、崖崩れなどがあり、事故災害には火災(火事災害)、原子力災害などがある。自然現象としての落雷や地震・津波が、それぞれ火災や原子力災害としての事故災害につながることもある。地震や火山噴火、豪雨などはいくら人間が努力しても防ぐことができず、そのため「防災」だけでなく「減災」という言葉も、阪神・淡路大震災以降は用いられることが多くなった。また、東日本大震災以降、防災・減災教育だけでなく、復興教育への取り組みも求められるようになっている。

 そもそも、地震、火山噴火、豪雨などは、それだけでは「自然現象」にすぎない。それらが人間や人間活動に悪影響を及ぼしたときに「災害」となるのである。つまり、人類が地球上に登場していない時代、現在でも人間が住んでいない、もしくは人間生活に影響がない場所では、いくら大規模な地震や火山噴火が発生しても、それは自然科学の対象となるだけで、自然災害とは呼ばない。

 防災教育は、まず自然現象が自然災害につながるメカニズムを理解することから始まる。次に地域の自然環境や生じやすい自然現象を知るによって、子供たちが対応方法を考えることが可能となる。その意味で、理科教育、特に地学教育の果たす役割は大きい。学習指導要領では、小学校から高等学校まで、物理・化学・生物・地学の4領域に体系・整理されている。しかし、高等学校になると、地学の履修率は他の3科目に比べて低くなり、大学入学共通テストの受験者数にも現れている。日本の歴史は小学校段階から学び始めるにもかかわらず、日本列島の形成の歴史は履修率の低い高校「地学」で学ぶことになっており、日本列島に住む多くの人が日本の地史を学ぶ機会が少ない状況にある。

 さらに、自然災害を理解するためには、自然科学個々のアプローチだけでなく、トータルな視点も必要である。最近は総合的に自然科学を捉える教育として、国際的にSTEM(Science・Technology・Engineering・Mathematics)教育が注目されている。科学技術や社会システムが発達し、発生する自然災害に関する情報が早く伝わったとしても、最終的には、その情報をどのように生かすかが大きな課題となる。改めて、自然災害の解明や防災・減災の進展には、さまざまな学問の融合、総合化した体系が存在すること、さらには教育、人材育成の重要性を認識させられる。


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