【激甚化する自然災害に備える(9)】防災教育のアップデート③恩恵と災害を持つ自然の二面性の理解

滋賀大学教授 藤岡達也

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 自然は人間に対し、災害だけでなく恩恵も与える。日常では、むしろ恩恵の方が多い。実際、エネルギー資源や食料資源、さらには観光資源まで、自然は人間に多くの恵みを与えてきた。自然環境が豊かな日本列島では、種々の国立公園、国定公園、都道府県立の自然公園などに加え、最近では各地にジオパークが設置されている。そこでの自然景観の観察や体験活動によっても、自然災害や自然の恩恵を学ぶことができる。

 日本で初めて国立公園が指定されたのが1934年、国定公園が1950年と歴史はそれなりにあり、それぞれ34、56カ所が指定されている。近年注目を集めているジオパークは、ジオ(大地)+パーク(公園)から、「大地の公園」と訳されていたが、昨今ではそのまま「ジオパーク」と呼ばれている。ジオパークの狙いとして、自然の保護・保全、教育・啓発、持続可能な開発を目指した地域の振興などがある。特に3番目の「持続可能な開発を目指した地域の振興」は、自然公園とは異なるジオパークの特色と言える。

 国内で日本ジオパークに認定されているのは43地域に上り、そのうち世界ジオパークに認定されているのが9地域に上る(2021年9月現在)。「洞爺湖有珠山ジオパーク」や「島原半島ジオパーク」では近年、火山の著しい噴火があった。東日本大震災発生後、被災地の状況をとどめた「三陸ジオパーク」、岩手・宮城内陸地震によって大規模な地すべりが生じた「栗駒山麓ジオパーク」など、中には自然災害をテーマにしている所もある。ジオパークで自然景観の成り立ちなどを学ぶことによって、自然災害が発生する可能性を知ることもできる。

 基本的な自然環境が、有史以来大きく変わっていない地域も少なくない。そのため、災害に備え、どのような対応がなされてきたのか、地域における危機管理を歴史から学ぶことも必要である。例えば、河川は古くから、人間が最も働き掛けてきた自然環境の一つである。今日の日本の大都市は、大部分が沖積平野に立地する。稲作農業が大陸から伝来した時期は沖積平野が発達し、人間が河川近辺に生活の基盤を築いた。この時代から自然の恩恵と災害を一層大きく受けるようになり、治水・利水が始まった。その後も中世の堤防建設、近世の河川の分離・分流工事、近代の河川流路の直線化、戦後の三面コンクリート張りの治水、さらに将来の地下放水路の建設に至るまで、各時代の先端の技術を治水に注ぎ込みながらも、それを超える溢水や破堤もあり、水害と人間の治水工事はらせん的な関係となっている。このように地域の自然環境と人間活動の歴史を学ぶことで、今後の防災に興味を持って取り組むことができる。


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