【高校情報科のアップデート(9)】学会等との協力

鹿野利春 京都精華大学教授

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 学習指導要領を作成するにあたって、学会との協力は欠かせない。今回も多くの学会の協力をいただいた。日本教育工学会、情報処理学会、日本情報科教育学会、教育システム情報学会、日本産業技術教育学会など、本当に多くの方々にお世話になった。各教科の学習指導要領を取りまとめる教科調査官の多くは、長年現場の教員を務めた教科指導の専門家ということになっている。しかし、教科に関するより深い知見、諸外国の動向、学習科学、小中学校や大学における情報教育、経済界や産業界の動きなどについては、その道の専門家の協力が不可欠である。

 また、学習指導要領の円滑な実施に向けて、教員研修、教員養成、効果的な事例の検討などを進める際にも、学会などとの協力は欠かせない。特に情報科については、経済界、産業界との連携も必要である。教科調査官として私が心掛けていたのは、「自分の知識や能力の限界が改訂に影響を与えてはいけない」ということであった。有識者の意見を聞いて咀嚼(そしゃく)し、自分でも勉強をすることによって、これからの社会に必要な資質・能力について考えを深められたのではないかと思う。ご助力いただいた方々には本当に感謝している。

 ただし、何をどれだけ学習指導要領に盛り込むかについての判断は、最終的に教科調査官に任されている。「情報Ⅰ」は、高校生全員が履修する科目なので、これが今後の日本国民のデジタル分野における素養になっていく。選択科目である「情報Ⅱ」も含めて、その内容を決めるに際しては、今後10年を見据えた長期的視点、現在の情報科を教える教員の現状、ソフトウェアやハードウェアの発展する速度、諸外国の状況など、実に多くのことに配慮しつつ高い次元でまとめる必要があった。最終的に必要だったものは、そのようなバランス感覚であったのかもしれない。

 学習指導要領公開後の協力例としては、情報処理学会に産業界の協力を得て、プログラミングやデータ活用について教員研修用の動画教材を作成していただいたり、みんなのコード、アシアル、ライフイズテックなどの企業・団体にも各地の情報科の教員研修を無料で行っていただいたりしている。このように、情報科の教員研修は行政だけではなく、学会や産業界も含めたオールジャパンの体制で進んでいる。今後は、他の学会や大学からも同様のコンテンツが供給されるとともに、産業界の協力もいただきつつ、情報科の授業および授業以外の機会を含めてこれからの時代を担う人材の育成が行われていくことになると期待している。

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