【ヤングケアラーの子どもたち(9)】子どもらしくいられるための家族全体の支援

田中 悠美子 立教大学助教・日本ケアラー連盟理事

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 子どもが安心して相談できる場を確保した後、具体的に子どもへの支援はどのようにしていくことが望まれるのでしょうか。まずは、その子が誰に対してどのようなケアをしていてどんな頻度や程度なのか、負担感や孤立感をどの程度感じているのか、生活への影響が生じているのかを確認するために、アセスメント(状況把握)を丁寧に行うことが大切となります。

 個別の支援を展開していくために、子どもが抱える支援ニーズを家庭の中で捉え、家族関係を支えるとともに子どもの権利を擁護し、柔軟な教育の機会の提供と家庭におけるケアの作業や責任を減らしていくことが重要です。

 困難を抱えている子どもへの直接的な支援はもちろん、子どもがケアをしている家族を含めた家族全体の状況を理解した上で、寄り添った関わりをしていくことが大切です。ヤングケアラーは「大変な状況」「かわいそう」などといった偏ったイメージを持たれがちです。そもそもヤングケアラーという言葉は、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている状態を表しているにすぎません。生活や健康への悪影響といったマイナスの面もあれば、責任感の強さや介護に関する実践的な経験値の高さ、そして、家族との絆の深さといったプラスの面も持っています。

 要介護者への支援や大人のケアラーへの支援体制が適切であれば、本来は子どもたちがケア責任を引き受けなくてもよいわけです。しかし、少子高齢化、核家族化などにより、家族のことは家族でするというのは厳しい状況になっています。そのため、社会的な支援を積極的に活用していくことを大人が率先して考えていかなければならないと思います。

 福祉や医療、行政などの支援者においては、子どもを「介護力」として捉えるのではなく、「成長途中の子ども」と捉える必要があります。その上で、ケアの負担を軽減し、自由に子どもらしく過ごせる時間を確保し、進学や就職など将来に向けて自立した若者へとステップアップしていけるように、具体的な機会や方向性を提案していくことが大切であると考えます。

 長期間にわたってケアを担ってきた子どもたちにとって、ケアの役割を手放すことは、ときに不安を抱きます。家族も同様に不安になる場合があります。家族のために費やしてきた時間から、自分に向き合う時間、自分のために使う時間へシフトできるように、心理的なフォローも含めた関わりが必要になります。具体的に、似たような境遇の人と出会い、出来事や気持ちを共有し、仲間(ピア)として話し合える場があるとよいと思います。

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