【ヤングケアラーの子どもたち(10)】長期化するケアと若者ケアラー支援の視点

田中 悠美子 立教大学助教・日本ケアラー連盟理事

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 子どもが家族のケアを始めた年齢は何歳からだと思いますか?2020年に埼玉県が高校2年生を対象に行ったアンケート調査によると、ケアの開始時期は「中学生の時」が34.9%、「小学校4~6年生ごろ」が20.1%、「高校生になってから」が19.5%でした。中学生の時から始まったと考えると、ケアを始めて少なくとも3年以上が経過していることになります。長期間ケアをするということは、その分、自分の時間を家族のために費やしていることになります。ケアによる人生経験の豊かさを得ている反面、自分の将来を考える時間が不足し、進学や就職などの見通しが立ちにくくなることも考えられます。

 ヤングケアラーが18歳以降もケアを継続することで、将来への影響がさまざまなところで生じてくることがあります。一般社団法人日本ケアラー連盟では、18歳からおおむね30歳代までの「若者ケアラー」について、ケアの内容はヤングケアラーと同様なものの、ケア責任がより重くなると示しています。

 高校生の時期にケアが優先となり、進路を変更したり、受験の準備が十分にできなくなったりする場合もあります。また、18歳以降もケアを継続する場合、大学などでの単位取得ができず卒業に影響したり、友人関係が希薄になったり、心身の体調不良に悩んだりすることもあります。こうして社会的に孤立してしまう条件がそろってしまうのです。

 また、15年の労働政策研究報告書では、就業している20代の介護者のうち、非正規雇用の者は46.4%という実態が明らかになっています。さまざまな理由が考えられますが、結果として就職の機会を逃してしまい、経済的に困窮してしまう可能性があります。さらには、一人暮らしや結婚などの将来のライフチャンスが得られにくくなることもあります。

 若者ケアラーは、ケアラーである前に、自分の人生を歩み始めたばかりの若者であるという認識が大切です。大人としてケアの役割も大きくなりますが、社会経験がいまだ乏しい時期でもあるため、個々の状況に応じて、自身の人生設計ができるように就労支援や自立支援の観点からのサポートが必要です。

 ヤングケアラーだけでなく、若者ケアラーへのまなざしを持つことが大切です。さらには、全世代のケアラー支援という視点で、政策を含めて地域社会の在り方を考えていかなくてはならない状況にあると思います。

 これまで10回にわたり「身近にいるのに見えにくい、ヤングケアラーの子どもたち」というテーマで書かせていただきました。貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。

 (おわり)

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