【コロナ禍の学校を支えるアンガーマネジメント(9)】保護者への対応~コロナ禍に求められるトラブル対応力~

川上淳子 Edu Support Office代表

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 コロナ禍、保護者への対応に苦慮している先生も多いのではないでしょうか。連絡帳や手紙、電話、面談のどのやりとりでも、教員が持つべき心構えは同じ。保護者の訴えを「クレーム」と捉えないことです。「クレーム」と意味付けると、「面倒なことを持ち掛けてきた」と、怒りになります。怒りには伝染するという性質があり、保護者との最初の対処は慎重にしたいものです。

 トラブルを巡って、保護者から理解を得られたときと、反発されたときがありませんか。その違いは何でしょうか。当協会監修の書籍※では「怒りっぽい人が多くなった理由」として、①仕事と子育ての両立や介護などによる忙しさ②科学技術の発達で便利になった反面、不便になったことへの忍耐力の低下③社会のグローバル化が進んだことによる価値観や習慣の違い、の3つを挙げています。私自身は共働きで核家族、子育て、両親のみとりで綱渡りの日々の中で、保護者の多様な価値観に直面して驚きの連続でした。当時、怒りを感じやすい理由を知っていれば、対処も楽にできただろうと思います。

 怒りのメカニズム(第3回参照)も思い出してください。「マイナスの感情・状態」は怒りを燃え上がらせるガス。その点で、面談には心身共に健康な状態で臨みたいものです。保護者の感情と状態にも目を向けると、他からのサポートを受けられない辛さや孤独、悲しさ、疲労や体調不良があることなどが分かってきます。「辛かったですね」という一言が、保護者からの信頼につながります。自分の思い込みを排し、相手の言葉を正確に聴くことを心掛けます。トラブルに関する事実・結果・行動・行為・振る舞いを共有するためにも、教室での日々の記録が欠かせません。

 連絡帳への返信も気を付ける必要がありますが、電話や面談を行うときにはさらに慎重に対応していきます。冷静にトーンを低くして時系列にまとめていきます。相手の言葉を受け止めて繰り返す、事柄をまとめて確認をする、相手のテンポや間に呼応させて会話するなどの工夫をします。保護者が納得できるのは「答えを与えられたとき」ではなく、「自ら答えを見いだしたとき」です。答えを引き出すには「どのような解決の手段があるのか」を考え、解決の糸口を自らの力で見つけられるように対話を進めていきます。子供のトラブルについて面談しに来たはずなのに、孤立無援だった自分の存在、自分自身の課題に気付かれる保護者も少なくありません。コロナ禍、保護者を支えるにはトラブル対応力が不可欠です。教職のスキルを向上させる絶好の機会となります。

※日本アンガーマネジメント協会監修『アンガ―マネジメントトレーニングブック2022年版』P149(ミネルヴァ書房刊)

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