【学校のパワーハラスメント(4)】パワハラは「べからず集」では対応できない

労働ジャーナリスト・職場のハラスメント研究所所長 金子雅臣

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1 「べからず集」では対応できない

 研修の場などでも、相変わらず「うっかり厳しく叱るとパワハラと言われそうで厳しい指導ができない」とか「何をしたらパワハラになるんですか?やっては駄目なことは何なんですか?」とかいう質問が繰り返されています。

 前者の質問からは「うっかり部下を傷つけたくない」という配慮よりも、「うっかりハラスメント問題になったら厄介だ」とか「面倒なことには巻き込まれたくない」という意思が透けて見えます。また、後者からはパワハラをいわゆる「べからず集」と理解して、「いかにして地雷を踏まないようにするか」に腐心している様子がうかがえます。

2 パワハラの6類型

 実は、パワハラ問題の本質は「何をやってはいけないのか」「何をやってもよいのか」という言動の区分けをすることではありません。パワハラをいかに回避するかを「べからず集」的に捉えて、そうした禁止事項をやらないようにということに目が行ってしまうと、本質を見失ってしまいます。

 厚労省の指針は、やってはいけない行為類型として、①身体的攻撃②精神的攻撃③人間関係からの切り離し④過大な要求⑤過少な要求⑥個の侵害――の6類型を提示しています。しかし、この行為類型はあくまで例示であり、パワハラのアウトラインを理解するためのものです。従って、パワハラになりやすいパターンを理解することにはなっても、本質を理解したことにはなりません。本当の問題はこの先にあります。

3 分かっていてもやってしまう人権侵害

 パワハラを巡るトラブルで、加害者はよく「そんなつもりはなかった」と言います。それは、言い換えれば、「相手がそんなふうに受け止めているとは知らなかった」「相手がそんなに傷ついているとは思わなかった」ということです。

 ハラスメント問題の核心は、「やってはいけないことと分かっていても」無意識に、もしくは許されると思って、やってしまうことにあります。従って「べからず集」に書いてあり、駄目なことと知っていても「ついついやってしまう」ことへの自覚を高めることが防止のポイントとなります。

 パワハラとは何かという概念を平易な言葉で言えば「力の弱い、反論できない相手に対して自分の意のままの振る舞いをすること」です。つまり、パワハラというのは、相手の反論がないことから、自覚のないままに行われる自己中心的な言動や振る舞いが引き起こす人権侵害の問題なのです。

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