【その指導は、しない(10)】「ポジティブリスト」をやめよう

めがね旦那 公立小学校教諭

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 今回のテーマは「ポジティブリストをやめよう」です。「ポジティブリスト」という言葉を聞き慣れない方も多いかもしれません。これは「〇〇をしよう」という実践を並べたものを指します。例えば、「学び合いをしよう」とか「自由進度学習をしよう」とか「百ます計算をしよう」とかいったものです。

 これらの教育実践は効果が高いと評判で、全国各地で実践されています。それぞれの実践に関する書籍も数多く出版されていて、それらを読めば多くの先生方が「ぜひ自分の学級でも取り入れてみよう」という気になるものばかりです。

 しかし、良い実践を詰め込んだからといって、それが良い教育になるかというと、僕はそんなことはないと思っています。教育関係者は、教育の持つ力を過信する傾向にあります。「教育をした分だけ子どもたちは伸びていく」というのは、多くの人が信じていることだと思いますが、果たしてそうなのでしょうか。

 近年は「〇〇教育」というものがどんどん現場に入ってきています。これは先述したような考えが根底にあるからでしょう。しかし、実際の教育現場は良くなるどころか、どんどん疲弊し続けています。やらせないといけない「ポジティブリスト」をいくら追加しても、現場がその理念を理解できないままやらせるだけになっていけば、食べ過ぎによる消化不良と同じです。

 今の学校教育は、風呂敷を広げ過ぎています。教育は皆さんが信じるほど万能ではありません。だからこそ、今こそ必要なのは「ネガティブリスト」ではないでしょうか。これは「ポジティブリスト」の逆で「〇〇をやめよう」というリストです。詳しくは拙著『その指導は、しない』(東洋館出版社)をご覧ください。「子どもたちにとって必要な力は何か」を「ゼロベース」で考えてみましょう。

 教育に一番必要なのは「余裕」であり「無駄」だと思います。子どもたちは失敗を繰り返しながら成長していきます。大人から見れば「無意味」で「無駄」に見える時間も、子どもたちにとっては「成長の糧」になっていることはたくさんあるはずです。そんな子どもたちの時間を、先生側が「ゆったりと見守ってあげられる」ような、そんな時間をつくるための「ネガティブリスト」づくりです。

 教育実践は「始めることは簡単」で「続けることは難しい」ものです。でも、一番難しいのは「元々あるものをやめる」ことだと感じます。足し算型の教育から引き算型の教育へ。そうして生まれた「余裕」は、子どもと先生に良い影響をもたらすと信じています。

 (おわり)

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