【ジェンダー教育と教師(3)】理数系科目のステレオタイプ

宮崎公立大学准教授 寺町晋哉

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 理数系科目の得意・不得意に「性別」は関係するのでしょうか。実は国内外の学力調査では、「理系科目の成績は女子より男子の方が良い」と普遍的に言える結果がありません。ですが、先生や保護者は「男子の方が得意」というステレオタイプを持っています。例えば、約23%の小中学校の先生が「理数系の教科は男子の方が能力が高い」と考えています(国立女性教育会館『「学校教員のキャリアと生活に関する調査」報告書』)。

 理数系科目で同じようにつまずいた子どもであっても、このステレオタイプが影響すると、「やっぱり女子は理数系が苦手だから」と女子には必要最低限の支援をする一方で、男子には「もう少し頑張ってみよう」と「もう一踏ん張り」を期待してしまうかもしれません。また、ステレオタイプを持っていると、理数系科目の成績が良い女子に「注目」してしまい、「女の子なのにすごいね」と褒めることもあるでしょう。「女の子なのに」と付け加えることで、単に「すごいね」と褒めるよりも女子生徒の数学意欲が低くなる傾向にあることが、教育心理学の研究で明らかにされています。

 子どもたち自身も同様のステレオタイプを持っています。このステレオタイプは、知らぬうちに子どもたちの「能力」を制限します。理数系科目の「能力」を測る場面で、「女子は理系に弱い」というステレオタイプによって女子がストレス状態に置かれ、その人の「能力」が発揮できないことが明らかにされています(『ステレオタイプの科学』英治出版)。驚くことに、「女子」ということを認識させられるだけでも、理数系科目の「能力」が制限されることもあります。

 「性別」情報によって私たちの言動にジェンダーが影響することは、本連載の第2回でも説明しました。つまり、学校のさまざまな場面に「性別」情報が存在することで、先生から子どもたちへの働き掛けにジェンダーが影響し、子どもの教育経験が「性別」によって異なってくる可能性が高くなります。場合によっては、理数系科目のようにジェンダー・ステレオタイプによって、子どもたちの「能力」や可能性が制限されることにもなります。また、先生が気を付けていたとしても、子どもたち自身が「性別」を認識し、自ら「能力」を制限してしまうこともあるのです。

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