【ジェンダー教育と教師(4)】「体力」に男女差はあるのか

宮崎公立大学准教授 寺町晋哉

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 「性別」を考える際、よく持ち出されるものが「体力に男女差がある」という話です。ここでは2019(令和元)年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(「体力テスト」)の結果を基に考えていきます。

 結論から言うと、「体力」に男女差はあります。しかし、それは集団の平均値と最高値だけであり、多くの男女は体力テストの結果が重なっています(「脳」も同様です。『教育論の新常識』で整理しています)。小学5年生は95.9%(握力)~74.0%(ソフトボール投げ)、中学2年生は88.7%(長座体前屈)~44.8%(ハンドボール投げ)が男女で重なっており、中学2年生の「ハンドボール投げ」以外は過半数が重なっています。

 この調査では運動習慣も尋ねていますが、小中ともに女子よりも男子の方が運動習慣を有しています。運動部活動の所属率は男子が75.6%、女子が57.3%です。こうした運動習慣や運動部活動も、「体力」へ影響を及ぼしていると考えられます。部活動で日常的に運動している女子が、帰宅部の男子よりも「体力」に優れているようなことは当たり前にあるでしょう。

 運動能力に優れた女子もいれば運動が全くできない男子もいる、つまり「体力」は「性別に関係なく人(個人差)による部分が大きい」ことについては、誰もが納得できるのではないでしょうか。「体力」と「性別」を結び付けて考えると、私たちはそのことをつい忘れがちになります。集団の差を持ち出して「体力は男子の方が優れている」ことを前提に学校体育を運営すると、「体力」に自信のある女子の能力を制限しかねませんし、「体力」に自信のない男子に不要なプレッシャーを与えてしまうことにもなりかねません。

 もう一歩踏み込んで、「体力」とはスポーツテストで測定する項目だけを指しているのでしょうか。究極の「体力」とも言える寿命は、日本の場合、女性の方が長い状況にあります。

 体力テストは筋力や体格といった「体力」の中でも、男女差が表れやすい項目で構成されています。つまり、「女性が不利・男性が有利」になりやすい項目を測り、私たちはその結果を見て「体力は男子の方が優れている」と考えているのです。さらに、体育の授業も、男女差が表れやすい競技スポーツ中心で構成されています。

 「時間内に一定のペースで走る能力」を中心とした体力テストや、生涯スポーツの基礎づくりを中心とした体育を実施すれば、「体力に男女差がある」という見方が更新されるかもしれません。

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