【GIGAスクールは序章に過ぎない(5)】教育データの全体像と標準化

理化学研究所経営企画部長・デジタル庁アドバイザー 髙谷浩樹

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 本連載ではこれまで、アーキテクチャに基づくデータのやりとりについて見てきたが、そもそも教育データとはどういうものなのか。

 デジタル庁のロードマップでは、文科省有識者会議での議論も踏まえ、教育データの全体像を示そうとしている。教育データの種類を、個人を特定するための「主体情報」、学習などの内容を決める「内容情報」、何を行ったのかを決める「活動情報」に区分している。

 今後は教育の場で、さまざまなデータが急増していく。そのデータが誰の何なのかが分からないと、データの利用価値はなくなり、DXの恩恵は受けられない。GIGAスクール導入の際には個人ID付与の必要性を訴えたが、それはこのデータを一意に決めるためである。

 さらにこのデータで急がれるものは「標準化」である。データを広くやりとりするには項目がそろっている必要があるが、データ量の急増に比して標準化が進んでいない。標準化とはある程度の「決め」であるので、国にはまず優先度をつけ、将来の拡張性も見越した上で、透明性を確保しつつ、急ピッチで進めていくことが求められている。

 このデータの扱いについては、連載の最初で紹介したように将来の目指す姿は何となく浮かぶものの、そこに至る具体的なデータの収集・分析評価・活用の手法がいまだ途上という課題もある。すでに教育でデータを利用している事例として、偏差値による入試判定がある。これは、過去の模試や合否結果の膨大な蓄積から統計学的な正確性を高めてきたのだが、目的が合否一点なのも評価を容易にした。ただ、教育自体がその目的に誘導されるという弊害も生まれた。

 今後の教育DXの中で、個人に最適なアウトプットはいくつもあるはずである。そのために必要なデータはどのようなものか。粗いデータだと評価に使えない一方で、詳細過ぎると保存や分析評価のリソースが過大になる可能性もある。そもそも校務や非認知能力など学習以外の情報についてはどのようなデータが取得でき、またどう個人の便益とするのか。

 このような分野の研究はラーニングアナリティクス(学習分析)と呼ばれ、近年は各大学で盛んになっている。さらにこれを実装した教育は「データ駆動型教育」や「エビデンス駆動型教育」と呼ばれ、全国の大学や産業界で構成される協議会も発足するなど、実現に向けた取り組みが始まっている。これからの教育DXの柱となり得る分野であり、今後の活動の拡大発展に期待したい。

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