【ジェンダー教育と教師(9)】ジェンダーの「課題」の「目線」をそろえる

宮崎公立大学准教授 寺町晋哉

この連載の一覧

 今回は、ジェンダーの課題を「課題」として共通認識することの難しさを説明します。

 この連載を読んだ先生であれば、学校で用いられる「性別」情報の多さを認識するかもしれません。一方で、ジェンダーに全く関心のない先生からすれば「性別」情報は「自然」であり、何とも思わないかもしれません。つまり、「〇〇はジェンダーの視点から見て課題である」と認識することは、その先生の経験に左右されるのです。そして、「〇〇はジェンダーの課題である」と自然に共通認識されないからこそ、ジェンダー教育実践の必要性も自然には共有されません。

 「何をもって男女平等とみなすのか」の合意形成も簡単ではありません(多賀太『男子問題の時代?』)。東京大学の女子学生の割合が長年20%程度で維持されていることや、理工系学科の女子割合が20?30%程度であることの「評価」も、立場によって異なります。

 現在の日本では、東京大学を目指す上でも、理工系学科を目指す上でも、「性別」は関係ありません。「教育の機会均等」という観点に立てば、東京大学も理工系学科も入試という「入り口」は「男女平等」なため、上記の女子割合は「課題」になりません。仮に東京大学や理工系学科に「女子枠」が設定されるなら、「男性差別」と「評価」されてしまいます。

 一方で、第3回で紹介した「理数系のステレオタイプ」のように、女子を理系から遠ざけるジェンダーが存在しています。また、東大に進学した女性から「女子が東大なんかに進学したら結婚できないよ」と言われたとの話を聞いたこともあります。このように、大学進学を目指すプロセスにさまざまなジェンダーの「ハードル」が存在しているのです。

 こうしたジェンダーの「課題」を是正する立場であれば、入試という「入り口」へ至るまでのプロセスが「実質的に男女平等ではない」ため、上記の女子割合は「課題」になり得ます。この立場からすれば、「女子枠」は「実質的な男女平等」へ向けたポジティブ・アクションとなるのです。

 「教育の機会均等」も「実質的な男女平等」も、抽象的な意味ではどちらも「男女平等」ですが、お互いの立場から「男女平等」を叫ぶだけでは合意形成に至りません。勤務校でジェンダー教育実践を推進する場合は、「何をもって、ジェンダーの『課題』/『男女平等』とみなすのか」という「目線」をそろえる必要があるでしょう。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集