【ジェンダー教育と教師(10)】子どもたちを中心に一歩ずつ進む

宮崎公立大学准教授 寺町晋哉

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 ジェンダーの「課題」は多様で、そもそも「課題」と共通認識することすら簡単ではなく、「先生の人生」も考慮しなければなりません。読者の中には再び、「じゃあどうすればいいの?」と思われた方もいるでしょう。最終回は、三つの提案で締めくくりたいと思います。

 第一に、私たちの認識や考え方には一定の「限界」があることを自覚しましょう。その人が育ってきた経験や人生は、その人の認識や考え方を形成します。例えば、女性管理職の多い自治体で育った先生と少ない自治体で育った先生とでは、「女性管理職」に対する認識も異なるでしょう。他に「女性・男性として育ってきた経験」なども「限界」となり得ます。手始めにジェンダーの視点から、自分の人生経験や立場、価値観を振り返り、自分の「限界」を認識することをお勧めします。

 第二に、子どもたちを中心に考えましょう。子どもたちを中心に据えることで、第9回で扱った「目線」をそろえやすくなります。各自の経験や理念を持ち寄った「男女平等」や「ジェンダーの問題」は話し合いが抽象的になってしまい、うまく進まないかもしれません。「目の前にいる子どもたちに何ができるか」という共通の目的を持つことで、具体的な話し合いができ、「目線」もそろいやすくなります。

 第三に、先生自身の価値観や人生そのものではなく、「子どもたちとのやりとり」から先生のジェンダー・バイアスを振り返りましょう。「そういえば重いもの運ぶときに男子を呼んでいた」など、日常的なジェンダーを互いに共有するのです。その上で、「それ、ジェンダー・バイアスですよ」と指摘するのではなく、「男女関係なく呼び掛けるにはどんな方法がある?」などを話し合うと、同僚関係も円滑になると思います。

 「限界」があるからこそ、「失敗」もあります。ジェンダーの研究をしている私自身も、明確に「失敗した」と思うことが度々あります。「明日から劇的に変わる」のは難しいので、私は「その都度反省すること」を心掛けています。

 学校におけるジェンダーの課題も、一つの取り組みによって劇的に変化することはまれです。子どもたちの「課題」を見つめながら、周囲の人たちと互いの「限界」を共有し、その都度反省したり改善したりしていく。そうして、子どもたちがジェンダーに縛られずに育っていく社会を一歩ずつ実現していくことが重要だと考えています。

 (おわり)

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