【「部活動問題」の論点整理(2)】「ブラック部活動」は曖昧

青柳健隆 関東学院大学経済学部 准教授

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 「ブラック部活動」という言葉を聞いたことがありますか? 聞いたことがない方でも、「ブラック企業」であればご存じだと思います。「ブラック部活動」と聞いてどのような部活動を思い浮かべるでしょうか。おそらく人によって、想像する内容が異なるのではないかと思います。今回はその曖昧さについて、整理します。

 実は「ブラック企業」にも明確な定義はありません。厚労省においてもはっきりとした定義はないようですが、ホームページでは「一般的な特徴として、①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す②賃金不払い残業やパワーハラスメントが横行するなどの企業全体のコンプライアンス意識が低い③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う――と紹介されています。

 その他にも、「労働契約書と実際の労働内容が違う」「有給休暇が取れない」「休憩がない」「上司が厳しい」「リストラがある」「望まない異動がある」「出勤やシフトが強要される」「仕事道具や商品の自腹購入がある」など、ブラック企業と言われるような会社の特徴を挙げれば切りがありません。しかし、このようなブラックな面が少しもない会社はどれほどあるでしょうか。反対に、このようなネガティブな面がある会社は全てブラック企業と言ってしまってよいのでしょうか。おそらく、それは言い過ぎだと思います。

 あらためて「ブラック部活動」について考えてみます。一口に「ブラック部活動」と言っても、それが何を指しているのか、どのような状況を指しているのかは判然としません。体罰やハラスメント、いじめが行われているような部活動を指しているのか、教員が部活動に長時間無償ボランティア状態で関わっていることを指しているのか、それとも厳しい練習で常勝を目指すような強豪部活動を指しているのか、「ブラック部活動」という言葉からだけでは読み取れないのです。

 その結果、同じことについて話しているようで、実は個々人によって想像しているものが異なる(自分の都合のよいように解釈している)というミスコミュニケーションが生まれてしまいます。部活動にさまざまな問題があることを包括して伝える言葉としてはよいかもしれませんが、悪いイメージが先行し、一部の問題を全体のものと錯覚してしまったり、厳しさやストイックさを単に悪いものとして伝えてしまったりなどの恐れがあります。部活動の問題を実際に議論・解決しようとするときには、より具体的に、部活動のどのような問題について話しているのか、お互いが共通認識を持っていることが重要です。

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