【「部活動問題」の論点整理(8)】地域移行を成功させるために

青柳健隆 関東学院大学経済学部 准教授

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 大きな転換にはリスクが伴います。地域移行が成功すれば、部活動は持続可能なものとなり、子どもがスポーツや文化に触れる機会を持ち続けることができるでしょう。スポーツや文化を支える地域・民間の活力が大きくなる可能性も秘めています。

 しかし、うまくいかなければスポーツや文化に親しむ人口が減少し、部活動で得られていた学びも得られなくなってしまいます。その影響は、部活動という狭い範囲にとどまるものではありません。運動部を例にすれば、競技人口が減ることで競技スポーツのレベルが低下したり、スポーツファンが減ることでスポーツ産業のマーケットが縮小したり、運動やスポーツに取り組む国民が減ることで将来的に健康問題が発生して健康寿命の短縮や医療費の増大が生じたり、スポーツ系大学の志願者が減ったりと、各所に中長期的な影響が出る可能性をはらんでいます。

 では、何をもってして、地域移行が成功したか、失敗したかを評価すればよいのでしょうか。私は、地域移行の成否を測る指標の一つはスポーツや文化に親しむ(加入し、活動する)青少年人口の割合だと考えています(詳細に言えば、平均実施日数や平均実施時間も評価指標になり得ます)。部活動とそれ以外のスポーツ・文化活動への参加者が減らないことが、部活動というインフラを壊さず、うまく地域に引き渡せたことの証しになると考えられるからです。

 あくまでも実際に活動している者の数なので、いわゆる「幽霊部員」はカウントに含めません。一方で、強制入部だとしても、実際に活動していることで個人や社会が受けている恩恵はあるため、そのような部員数も評価に含めます。前回挙げた地域移行に関するさまざまな課題についても、「どうすれば参加者が減らないか」という視点で考えると、一貫した方向性での対応が可能になると思います。

 地域移行がなされれば、教員がこれまでボランティアで補っていたものが外に出ます(つまり、その分の負担が地域に生じます)。問題は、その負担を何で賄うのかです。受益者(保護者)の金銭的負担で賄うのか、地域住民の無償のマンパワーで賄うのか、公費で賄うのか(公教育という観点からは、スポーツや文化経験に家庭の経済状況の格差を持ち込まないようにしてほしいところです)。誰かがお金か労力を出さなければ、今まで通りとはいきません。賄えない負担分は、参加者または活動の実施日数・実施時間を減らすことで補うことになるでしょう。

 次回はもう一歩進んで、地域移行以外の解決策について考えてみます。

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