【職員室革命(9)】マインドセット⑨ 適応課題か技術的問題かを見極める

中村浩二 名古屋市立矢田小学校教頭

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 皆さんは「適応課題」と「技術的問題」という言葉をご存じでしょうか。ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授は、組織の問題を「適応課題」と「技術的問題」の2つに分けて次のように定義しています。

適応課題…自分自身の物の見方や、周囲との関係性が変わらないと解決できない問題。自分も当事者であり、問題の一部である。

技術的問題…解決策がすでに分かっており、知識やスキルを身に付ければ解決できる問題。問題は自分の外にある。

 学校で起こっている問題の多くは、適応課題だと言えます。学習指導や生徒指導に関する課題について話し合う際、教員一人一人の積み重ねてきた経験が違っていたり、持っている情報量から課題の見え方や解釈の仕方が違っていたりして、衝突することがあります。その最たる例の一つが「学校の働き方改革」だと思います。

 学校の働き方改革に関わる取り組みの事例集が文科省や各自治体でまとめられていますが、活用がなかなか広がらないのは、適応課題としてのアプローチが不足しているからではないかと感じています。

 まずは丁寧な対話を重ねて、「学校の働き方改革は定時で退勤すること」が目的であるという意識から、「働き方改革を進めることで余白を生み出し、心身共にリフレッシュして生き生きと働くことができるようにするとともに、学ぶ時間を確保して、子どもに豊かな学びを提供できるようになること」という意識に転換していくことが必要です。

 これまでの「労働観」「指導観」で十分と考えている先生の中には、積み重ねてきた経験を否定されたような気持ちになる人もいるかもしれません。アンラーン(学び直し)という精神的に痛みを伴うプロセスを経ることになりますので、管理職は職員の不安な気持ちを受け止め、励ましていく必要があります。「働き方改革」を技術的問題として捉え、時短や効率化ばかりを求めていると、改革が一向に進まない状況になりかねません。職員と対話を重ね、不安を取り除いたり、理解を求めたりすることが、遠回りのようでいて、実は実現の近道ではないかと感じています。

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