【学校と法律をつなぐ(2)】なぜ学校では違法なことが起きやすいのか

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 スクールロイヤーをしていると、いじめ、体罰、ブラック校則、労働問題など、学校ではさまざまな法律問題が生じていることを実感します。学校で違法なことが起きる原因について、弁護士や研究者の多くは教師が法律や子どもの人権をよく理解できていないことに原因があると考えています。確かにそうかもしれませんが、本当にそれだけでしょうか。

 そもそも法律で決められていることが教育的にも正しいことなのかと言えば、必ずしもそうではありません。むしろ、「法の下の平等」を掲げる法律の理想と、「個別最適化」の学習を担う教育の役割は、全く相反する要素を持っているとも言えます。

 例えば、日本の法律では同年齢の子どもはたとえ能力が全く違っていても平等に同じ学年に所属しますが、これは教育的に正しいことでしょうか。また、今年4月から18歳は成年者として扱われていますが、同じ高3なのに4月生まれの生徒は3月生まれの生徒よりも本当に「大人」なのでしょうか。一見合理的に考えて制定されているはずの法律ですが、教育現場に適用してみると不都合が生じることも少なくないのです。

 スクールロイヤーの仕事をしていると、学校で生じている法律問題のほとんどは、法律が目指す理念と実際に学校で行われる教育の実態との間のズレから生じていることが分かってきます。そもそも法律には「適法」「違法」の2つしか結論がありません。一方で、教育の結論は2つとは限りません。弁護士や研究者が学校のやっていることを「違法」と断言しても、それはあくまでも法律の理屈での結論にすぎず、教育が目指すべき結論とは異なるかもしれないのです。

 また、法律の理屈は必ずしも人間の実態に適合しているわけではありません。心理学や行動経済学などでも明らかな通り、人間は理屈で行動するとは限らないからです。そのような人間そのものを扱うのが教育なのです。

 同じように人間自体を扱う分野としては医療があります。しかし、医療は科学的な根拠に基づいて行われるのに対し、教育は必ずしもそうではありません。学校は誰もが経験しているため、各自の経験に基づく教育論が無数に存在するのです。

 その一方で、データやエビデンスに基づいて教育を科学的に考察・分析しようとする研究も盛んに行われています。しかし、多くの弁護士はこうした研究をほとんど理解せずに学校の法律問題に関わっており、中には最新の教育学の学術論文をほとんど読まず、何十年も前に法学部で使っていた教科書に基づいて学校の法律問題を論じている人もいます。

 学校で起きる法律問題を議論する際には、こうした法律と教育の関係についての背景事情を理解しておく必要があります。

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