【学校と法律をつなぐ(4)】ブラック校則とそうでない校則の「線引き」

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 前回紹介した裁判所の考え方に基づけば、教育上の目的達成に必要とも言えず、社会通念に照らして合理的とも言えない校則は違法です。「下着の色を確認する」「地毛を黒髪に染めさせる」といった校則は、ともすれば犯罪行為やハラスメントに該当する行為であり、どのような教育目的があったとしても許されることではありません。また、「ツーブロック禁止」「ポニーテール禁止」といった校則は、学校として校則の目的を合理的に説明することが難しく、こうした特定の髪型を禁止する校則を撤廃する動きも見られます。

 こうした「ブラック校則」とそうでない校則の「線引き」はどこにあるのでしょうか。個人の尊厳を掲げ、自己決定権を保障する憲法の理念や、他人に危害を加えない限りは自由を最大限に尊重すべきであるとする「危害原則」を徹底するのであれば、服装や頭髪の規制はそもそも許されないはずであり、実際に弁護士や研究者の多くはそのように考えています。

 しかし、ある小学校で、金髪でタトゥーを入れているA君のことが恐くて、同じクラスのBさんが不登校になったケースで、教師が「A君の自由は憲法で保障されているのだから、Bさんも受け入れてあげなさい」と話しても、Bさんやその保護者は簡単に納得するでしょうか。

 あるいは、生徒ではなく担任の先生が金髪でタトゥーを入れているケースで、クラスの生徒がその先生を嫌がって不登校になったとしても、先生が「私には憲法で保障された自由があるのだから、あなたたちもそれを受け入れなさい」と説得すれば、生徒や保護者は簡単に納得するでしょうか。

 また、教師の前では金髪に染めて、就職活動時は黒髪に戻す生徒の行動はどう考えるべきでしょうか。生徒からすれば当然の行為かもしれませんが、よく考えると生徒の判断は「就職活動では金髪は許されない」という面接官が考えるTPOを理解した上で、「学校では金髪は許される」と自分本位でTPOを判断しています。

 結局、服装や頭髪はTPOの問題です。TPOは自分本位では決められません。相手の考え方もあって成り立つルールです。しかし、多様な価値観が混在する学校で、TPOを決めていくのは非常に難しいことです。また、教育目的から考えると、真面目に勉強し、自分の行動に責任を持って学校生活を送っている生徒ならどんな服装や頭髪であっても問題ないはずです。一方で、服装や頭髪ばかり気にして勉強していない生徒なら、これを放っておくわけにもいきません。むしろ生徒の状況に応じて柔軟に個別最適な校則指導をしていく運用が大切ではないかと思います。

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