【学校と法律をつなぐ(5)】校則の見直しではどのような現象が起きているのか

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 ここ数年、全国の学校で校則を見直す動きが広まっています。背景には、教育現場のグローバル化や価値観の多様化に加えて、新型コロナウイルスに臨機応変に対応しなければならない実情があります。

 また、子どもの権利条約や学校民主主義の観点から校則を明確化してホームページに開示することや、生徒の意見を取り入れて校則を制定することなどを求める動きも見られます。

 現状の校則の議論では実際に学校現場に足を運んで実態を観察していない弁護士や研究者が伝聞や憶測で議論する状況が見られますが、私はスクールロイヤーとして校則の見直しの相談を受け、実際に現場でその様子を観察することもあります。そこで目にする光景は、ともすれば「教師vs.生徒」という構図で語られがちな、校則の見直しとはかなり異なる実態です。

 まず、「教師vs.教師」という構図が存在します。校則の在り方や指導について、教師の間でも大きな考え方の違いがあるのです。昔ながらの毅然(きぜん)とした指導を目指す教師もいれば、価値観の変化や生徒のニーズに対応した指導を目指す教師、私のように生徒の能力や環境などに応じて校則の運用を使い分ける教師もいます。

 校則の見直しでは、「生徒vs.生徒」の構図も少なからず生じます。例えば、ある中学校では制服と私服の選択制を導入しようとしたところ、反対する生徒がかなりいました。理由を聞いてみると、「私服だった小学生時代に服装でつらい思いをした」「制服を選択する人が少数だったら、制服を着づらくなる」など、それなりに切実な理由だったのです。また、ある高校では生徒会が頭髪の規制を撤廃する校則改正案を提唱し、全校生徒の投票で賛否を問うたところ、反対多数で否決されてしまいました。反対した理由の多くは「頭髪を自由化したら外見の競争が生まれ、ストレスが増える」というものでした。校則問題では子どもの権利条約上の権利同士が衝突する場合もあったり、少数派の生徒の人権が問題になるケースでは学校内の多数決で民主的に決するのになじまないこともあります。

 私がスクールロイヤーの仕事で一番よく受ける校則相談は、スマホやiPadの使用ルールです。ICT教育を進めなければならない一方で、ネットいじめなどのトラブルから子どもたちを守らなければならない。そのような中で現場が一番悩んでいるのはネット利用のルールなのですが、校則の見直しの議論の中ではほとんど目立っていません。

 このように、校則の見直しを議論する際には、実際に現場で起きていることを確認しながら議論する必要があります。

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