【学校と法律をつなぐ(6)】「いじめは犯罪」というけれど…現実はそう単純ではない?

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 「いじめは犯罪だから学校ではなく警察が対応すべき」と昔からよく言われます。しかし、正確には法律上のいじめは3種類あり、犯罪に該当するのはそのうちの1種類です。

 法律上のいじめは、①いじめ防止対策推進法上の「いじめ」②民事上の損害賠償責任が成立する「いじめ」③犯罪に該当する「いじめ」――の3種類があります。いじめが成立する範囲として最も広いのは①で、犯罪が成立する範囲が最も狭いのは③です。

 この点は裏を返せば、①のいじめ防止対策推進法上の「いじめ」の定義が広過ぎるのではないか、という問題でもあります。なぜなら、同法では行為の対象になった児童生徒が心身の苦痛を感じていれば、行為者の意思や一般人の感覚は一切関係なく「いじめ」に該当すると定義しているからです。告白されて断っても、掃除をさぼった人を注意しても、先に悪口を言われて言い返しても、相手が心身の苦痛を感じたら「いじめ」になるのです。つまり、常識的に正しいことをしても、法律上はいじめの加害者になってしまうということです。

 この定義が存在する以上、「いじめは犯罪だから学校ではなく警察が対応すべき」という考え方は成り立ちません。告白されて断っただけで警察沙汰になるのは常識的にもあり得ない話だからです。一方で、いじめ防止対策推進法は、児童生徒の生命・身体・財産に重大な被害が生じる恐れがあれば直ちに警察に通報し、援助を求める義務を学校に課しています。つまり、いじめが犯罪行為である場合、学校は警察と連携しなければなりません。

 こうした警察との連携義務を学校が適切に履行するためには、学校があらゆるいじめ行為の中から犯罪に該当する行為を認定する必要があります。しかし、刑事法の知識や事実認定の手法に詳しいわけではない学校がその判断をするのは非常に困難であり、スクールロイヤーがいじめの初期段階からその判断に関わる意義があると言えます。

 一方でいじめ防止対策推進法は、いじめにより生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがある場合は、「重大事態」として学校に調査義務を課しています。私見ですが、重大事態には「心身」に重大な被害が生じた場合、すなわち精神的に重大な被害が生じた場合が含まれており、この点で「身体」への重大な被害に限定している警察連携義務と異なる存在意義があると考えています(実際に、統計上も「心身」への重大な被害が生じた場合に多くの調査が行われています)。

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