【学校と法律をつなぐ(7)】「いじめ加害者は出席停止に」は議論の方向性として妥当か

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 最近、「いじめ加害者に対しては出席停止をもっと活用すべきである」という主張をネット上でよく見掛けます。しかし、私はこの主張は理論的にも実務的にも丁寧な分析に基づいておらず、やや議論を単純化する傾向にあると懸念しています。

 まず、法制度の建前から考えると、いじめ加害者に対して学校が最初にすべきことは「指導」であり、次に「懲戒」です。そして、法律上の懲戒には停学や退学といった選択肢が用意されています。ところが日本の法律では小中学校の児童生徒に対し、公立だけでなく国立・私立も含め停学にはできない規定になっています。つまり、この規定があるからこそ出席停止に議論が進みがちなのです。

 この規定は「小中学校は義務教育だから」という根拠に基づいているのですが、全く説得力がありません。なぜなら、同じ義務教育であっても海外の小中学校は停学が普通に可能であり、むしろ日本が例外的だからです。海外の学校ではいじめの加害者を停学にするのは珍しいことではなく、停学中に効果的な指導や更生プログラムを実施している所もあります。

 つまり、日本のいじめの議論においても、いきなり出席停止の活用を議論するのではなく、まずは「小中学校ではどのような事情であっても例外なく停学にできない」という極めて硬直的な法制度を見直す議論をしなければならないはずなのです。

 この点は小中学校で生徒指導を担当する先生方にとって長年の悩みでもありましたが、研究者や法律家がこの法制度上の問題を正面から指摘したことはほとんどなく、数年前に私が著作で紹介した時も先行研究はほとんどありませんでした。しかし、スクールロイヤーとしていじめ対応の最前線に関わっている弁護士からは、同じような問題意識が広がっています。

 小中学校でも停学や退学が可能になれば、次に懸念されることはそれが学校によって恣意(しい)的に乱用されることです。そのため、私は学校が停学や退学を判断する際の事実認定と、比例原則や利益衡量などの法的判断にスクールロイヤーが関わり、手続き保障を担保する制度の導入を提唱しています。いじめの加害者に対しても、停学にしてもよい事実関係があるかどうかをスクールロイヤーが判断し、停学中の学習や指導、更生プログラムなどについて教員やスクールカウンセラーなどと協議してチームで対応していくことが望ましい在り方だと考えています。

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