【学校と法律をつなぐ(8)】どのようなワークルールなら先生が幸せに働けるか

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 公立学校の先生は給特法と呼ばれる法律に基づいて、政令で定めた4つの業務でなければ残業を命じることができず、当該業務に関する残業分の手当があらかじめ給料に上乗せされています。しかし、実際には部活動や授業準備など、4つの業務以外で多くの先生が事実上の残業を強いられています。

 教員の忙しさは校種で異なります。小学校の先生は授業時数が多く、全教科を担当しなければならないため、授業準備が大変な上、給食指導もあるので休憩時間も十分に取れません。中学校の先生は最も過酷で、授業時数が多い上に生徒指導や進路指導も大変で、その上部活動によっては放課後や土日にも顧問業務が長時間に及びます。特に経験したことがない部活動を担当する場合は大きな負担やストレスがかかります。

 教員の長時間労働の要因である給特法は早急に見直す必要がありますが、公立学校の先生にも労働基準法を全面的に適用すれば解決するとは限りません。なぜなら、労働基準法が適用されている国立・私立学校の先生の多くも決して働きやすい環境ではないのが実態だからです。

 日本の労働基準法は労働時間に基づいて賃金を決めるので、能力や成果、労働密度は関係ありません。そのため、もし労働基準法をしゃくし定規に適用すれば、部活動が大好きで毎日指導したい先生が残業代を求めて「ブラック部活動」化させる、残業代を求めてダラダラと授業準備をする、同じ時間の残業をしても残業代の算定基礎となる基本給が高いベテラン教員が若手教員よりも多く残業代をもらえる、といった弊害が生じるかもしれません。

 民間企業ではこうした弊害を合理的な労務管理や賃金体系で防止しようとしますが、教員の仕事は成果が測りづらく、校種・教科・校務分掌・部活動などによっても仕事量は全く異なります。また、多くの先生は自分のペースと裁量で仕事をしたいので労務管理は簡単ではありません。また、多くの学校の管理職は教員出身の校長と教頭の2人しかおらず、教育活動とは全くノウハウが異なる労務管理に必ずしも慣れていません。責任ばかり重くて残業代がもらえなくなる管理職になるよりも、授業準備や部活動で残業代がもらえる教諭のままの方がよいと思えば、管理職の成り手がさらに減るかもしれません。

 そのため、私はそれぞれの校種の特性を反映した、子どもたちのために真面目に、かつ効率良く働く能力の高い先生が働きやすいワークルールを考案すべきだと考えています。

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