【学校と法律をつなぐ(9)】教員の労働問題の解決に必要な議論は何か

神内 聡 弁護士・兵庫教育大学大学院准教授

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 教員の労働問題を解決するためには、真っ先に現在の仕事量を減らすことです。私は「教えることが多過ぎる」、つまり学習内容が全く精選されていない点を改善すべきだと考えています。

 今の学校は各業界から「○○教育」が押し寄せていますが、それらのほとんどは効果検証がされていません。しかし、「○○教育」をはじめ学習内容は増えるばかりで、日本の学校のカリキュラムは全く余裕のない飽和状態にあります。しかも、その学習内容は本当に子どもたちがこれからの社会に出て役立つことを教えているのか、全く検証されていません。

 学習内容と同様に、抜本的に改革すべきなのは部活動です。しかし、部活動は教員の労働問題で真っ先に議論に上がりやすいですが、学習内容の問題はほとんど議論に上がりません。確かに、部活動は教員の本務ではなく、将来的に学校外に外部委託することには賛成です。しかし、子どもたちの将来を考えたとき、大人になって役立つかもしれない部活動で得られる能力や趣味と、多くの大人が役に立った実感を抱いていない週に何時間もの英語の授業と、どちらが学校教育で優先されるべきか、本当に正面から議論しなくてもよいのでしょうか。

 子どもたちが生きていく上で必要な知識や教養、認知・非認知能力について、限られた学校教育の時間の中であらゆる子どもたちが習得できるように内容を精選し、その上で子どもたちの希望やニーズに応じて部活動や応用的な学習などを選択授業として設定すれば、教員の勤務時間内でまとめることは不可能ではないかもしれません。

 また、教員の仕事が大変なのは事実ですが、「他のどのような仕事と比べて何が大変なのか」という比較はほとんどされていません。なぜなら、教員は他の業界から転職した人も、他の業界に転職する人も少数だからです。社会人経験者が非常に少ないことは、学習内容が実社会で求められるニーズに合致していない点の一因かもしれません。

 海外との比較も重要です。日本の教員の仕事や労働時間は確かに過酷ですが、アメリカの教員と比べれば待遇や安定性では恵まれている面もあります。

 教師としての適性と資質に優れた先生が、子どもたちのために一生懸命頑張っているにもかかわらず、過酷な労働を強いられて燃え尽きそうになっている現状は絶対に改善しなければなりません。そのためにも、教員の労働問題を議論する上では法律だけでなく、教師という仕事の実態と特殊性を踏まえた公正な議論が必要だと考えています。

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