【不安の予防教育プログラム「勇者の旅」(2)】子どもの不安と不登校

浦尾悠子 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・特任講師

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 不安は、誰もが抱く自然な感情です。私たちは、自分の身に危険が迫れば不安を感じます。もしも不安を感じられなかったら、身を守れずに危ない目に遭ってしまうでしょう。生きていく上で、不安を感じることはとても大切です。しかし、不安が強くなると、生活上のさまざまな問題に発展し、時には不安症(不安障害)と診断されることもあります。では、健康な不安と病的な不安の境目は、いったいどこにあるのでしょうか。

令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要(文科省ホームページより引用)

 その基準として「その不安が過剰かどうか」ということがあります。過剰というのは、不安が①必要以上に強く感じられたり、②非常に長く続いてしまったりして、そのせいで日常生活に何らかの支障が生じてしまう状態を指します。

 不安を感じたとしても、それが一時的なもので生活への支障もなければ、心配はいらないと思います。しかし、健康な不安と病的な不安に明確な境目はなく、また感情はその時々で変化しますので、不安そうな様子が見受けられる子どものことは、注意深く見ていく必要があります。

 例えば「人前で緊張する」「教室に入るのが不安」「学校へ行くのが怖い」などの不安や心配が過剰になり、日常生活に支障が出てしまう例として、不登校が挙げられます。文科省が毎年度、学校を対象に行っている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小中学生の不登校のきっかけとして、「本人に係る状況」のうち「無気力・不安」が毎年、飛び抜けて高い割合(46.9%:2020年度調査報告)を占めています。先生方から見ると、不登校に至った児童生徒の約半数は、不安や無気力といった情緒的問題を抱えている、という状況と捉えられます。

 また、文科省は20年度に、不登校の子ども本人に対する調査も実施しています(図参照)。その結果を見ると、子どもたちは「友達のこと」「先生のこと」「勉強が分からない」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」などを、学校に行きづらいと感じたきっかけ(複数回答可)として挙げています。

 この2つの調査は、設問や回答方法が異なるため単純比較することはできませんが、おそらく子どもたちは、友達や先生との人間関係や学習面のつまずきから不安や無気力などの情緒的問題が生じ、それが身体の不調や生活リズムの乱れにつながり、学校に行きづらくなっているものと推察されます。実際に私自身も、認知行動療法センターにて不登校を主訴に来られるお子さんのセラピーを担当することがありますが、多くの場合、不安やうつの症状を持っています。

 そこで次回は、不安やうつといった気分の問題に対して有効とされる認知行動療法について、ご説明していきたいと思います。

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