【不安の予防教育プログラム「勇者の旅」(3)】認知行動療法とは

浦尾悠子 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・特任講師

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 認知行動療法とは、不安やうつといった「感情(気分)の問題」を維持させている「認知」や「行動」の非機能的パターンに焦点を当て、それらが機能的なものへ変化するようクライエントをサポートすることで、気分の問題の改善を図ろうとする心理療法です。認知行動療法の「認知」とは、「物事の受け止め方・捉え方」のことです。認知という言葉はやや難しいので、子どもには「頭に浮かぶ考え」や「頭の中の独り言」などと説明しています。

不安の問題をもつ人の認知行動モデル

 例えば、不安の問題を持つ人の場合、「○○が起きたらどうしよう」と予期不安的な捉え方(認知)をしたり、回避的な行動を取りがちです(図参照)。このような認知・行動パターンは、一時しのぎにはなるものの、長期的に見ると不安を維持させてしまう要因となります。そこで、不安の問題を維持させている認知・行動パターンと、それに影響を与える環境要因を総合的にアセスメントし、クライエントの中により機能的な認知や行動が芽生えるよう、生活上の工夫や対処を具体的に検討していきます。

 相談機関で認知行動療法を受ける場合、アセスメント面接を経て、おおよそ12~16回程度のセッション(面接)が行われます。また、毎回のホームワークを通じて、セッション内で検討した認知的・行動的対処を実生活の中でも行ってみるように勧められます。そうやって、その人の中に新しい認知・行動パターンが形成されていくことで、不安の問題が小さくなっていくのです。

 認知行動療法が、精神分析や来談者中心療法といった古くからの心理療法(精神療法)と異なる点の一つに、多くの研究によって効果が実証されていること、つまり「エビデンスに基づく心理療法(精神療法)である」という点が挙げられます。例えば認知行動療法は、うつ病の治療で薬物療法(抗うつ薬)と同程度、不安症の治療においては薬物療法以上の効果があることが分かっています。

 このように、研究によって心理療法の効果を証明できるようになったのは、認知行動療法が他の心理療法とは異なり「構造化」されている、つまり回数・時間・内容などがある程度決められているからだと言えます。このため、複数のセラピストが別々のクライエントに対して行ったセラピーも、同じ認知行動療法の介入として扱い、効果を検証することが可能となるのです。

 なお、日本では認知行動療法を行える専門家が不足している上に、まだ多くの疾患で保険適用外であるため、誰もが気軽に受けられるものにはなっていません。今後こうした状況が改善され、誰もが気軽に認知行動療法を受けられる社会になっていくといいなと願っています。

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