【プロティアン・キャリア教育 (3)】「アイデンティティー」と「アダプタビリティ」とは

内田雅和 三田国際学園中学校・高等学校中学教頭

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 「The Career is Dead」

 1996年、ダグラス・ホールが出版した書籍のタイトルは「キャリアは死んだ」というものです。この言葉は、これからは個人がキャリアを模索していく必要があり、これまでの伝統的なキャリアは消滅していくことを意味します。伝統的なキャリアとプロティアン・キャリアの違いをまとめたものが次の表です。

伝統的なキャリアとプロティアン・キャリア

 プロティアン・キャリアにおいてポイントとなるのは次の2つです。

・キャリアとは組織の中ではなく個人によって形成される。

・キャリアとは変化に応じて、個人にとって必要なものに変更できる。

 プロティアン・キャリアの概念は1976年に提唱されましたが、日本では20世紀の間は浸透しませんでした。日本では終身雇用で長期的な雇用が保障されていたため、伝統的なキャリアへの指向が根強かったからです。多くの人材にとって、組織内でいかに高い評価を受けるかがキャリアの目的となっていました。

 しかしバブル崩壊以降、景気の低迷が続く中で、次第に終身雇用を維持できなくなる企業も増え、企業としても不測の事態に備えなければならない時代になりました。今は企業と労働者のどちらも、組織内でキャリアを抱え込むことに限界を感じています。

 そうして社会や企業が変化すれば、教育現場も大きく変わる必要があります。プロティアン・キャリアの革新性は、一つの組織にとらわれず、「自律的キャリア」が重要であると主張していることです。自律するためには組織に依存せず、自分がどのようなキャリアを歩みたいか、意思を言語化する必要があります。

 自分の意思を明確にするために必要となるのが、2つのコンピテンシーです。それこそが「アイデンティティー」と「アダプタビリティ」です。コンピテンシーとは、職務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結び付く特性です。1990年代にアメリカで人材活用の場に取り入れられ、日本でも行動特性をモデル化して評価基準とし、企業などの人事考課に活用されています。

 次回から2回にわたり、「アイデンティティー」と「アダプタビリティ」のコンピテンシーを取り上げます。

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