【不安の予防教育プログラム「勇者の旅」(5)】「勇者の旅」プログラムとは

浦尾悠子 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・特任講師

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 「勇者の旅」と名付けた予防教育プログラムでは、子どもたち一人一人が勇者となって、「勇者城」を目指して旅をするというストーリー仕立てにすることで、興味関心を持ってもらえるよう工夫しました。なお、予防プログラムは前回ご紹介したFRIENDSをはじめ、複数のネガティブ感情(例:不安、うつ、怒りなど)を一緒に扱っているものが多いのですが、「勇者の旅」ではあえて「不安」感情にフォーカスしました。その理由としては、①「不安」は多くの子どもが経験する感情であること②不安の問題と認知行動療法は相性が良いこと③シンプルに一つの感情を扱う方が混乱を招きにくいこと――、などがありました。

「勇者の旅」プログラムの内容と構成

 「勇者の旅」は、小学5・6年生~中学1年生を主な対象としており、45分×10回(中学校では50分×9回)のプログラムです(図参照)。授業は「学級活動」「総合的な学習の時間」「保健」「道徳」などの時間帯に行われ、ワークブックと指導案に沿って、担任や養護教諭などが実施します。先生方に事前の受講をお願いしている指導者養成研修会では、認知行動療法に関する基礎的な講義や、「勇者の旅」プログラムの授業実践ロールプレーなどを1日(6時間)かけて行い、参加者の先生方が「勇者の旅」の授業を体験的に理解していただけるように工夫しています。

 研修会の受講のほかに実践校の先生方にお願いしているのが、プログラム実施前後とフォローアップの計3回、プログラムの実施学級と非実施学級から取ったアンケートの結果を千葉大学へご提供いただくことです。「勇者の旅」は今のところ、研究という側面を持ち合わせているため、事前に保護者へ手紙を配布して研究参加の意思をご確認いただいた上で、個人情報を除いた質問紙調査データを千葉大学へお送りいただいています。

 学校現場で「勇者の旅」を実施することで期待される効果としては、大きく3つあると考えています。1つ目は、子どもたちが認知行動療法の考え方を知り、不安感情とうまく付き合っていくための考え・行動のパターンを身に付けることで、不安の高い子どもの不安スコアが低減することです。2つ目は、クラス全体でプログラムに取り組むことで、結果として不安の生じにくい学級・学校環境が形成されるのではないかということです。そして3つ目は、「勇者の旅」の授業を担当する先生方が、事前の研修などを通じて認知行動療法について学ぶことで、先生方自身のメンタルヘルスの保持増進にもつながる可能性があるということです。

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