【不安の予防教育プログラム「勇者の旅」(9)】「勇者の旅」プログラムで子どもたちが学ぶこと②

浦尾悠子 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・特任講師

この連載の一覧

 ステージ5~7にかけては、認知行動療法の「認知」について扱っていきます。「認知」という言葉は小学生には難しいので、「勇者の旅」では「考え」と表現しています。

「勇者の旅」ワークブック「ステージ6」より抜粋

 ステージ5では、考え(認知)を捉える練習として、初めに吹き出しのイラストに考えを書き出すワークなどをします。その後、自分が実際に不安を感じた場面を認知行動モデルに書き出して、考え・気持ち・行動を整理していきます。このように、認知や行動を書き出して整理する作業(外在化といいます)は、メタ認知を育む上でとても大切です。

 ステージ6では、不安になると人はつい、「○○が起きるもしれない」「○○だったらどうしよう」などと、予期不安的な考え方をしがちであることを共有します。また、不安が大きくなると「反すう」といって、その考えが頭の中をグルグル回る状態に陥りがちです(図参照)。この反すうが続くことで、不安やうつの問題は維持されてしまうため、反すうの状態に早めに気付いて、そこから離れるための方法を共有します。

 ステージ7では、認知再構成法という技法を学びます。これは、ネガティブな感情体験を振り返って、そのとき頭に浮かんでいた考えとその根拠を書き出した後、反証となる新たな事実を探して書き出し、より機能的な考えを導き出すというものです。認知再構成法は、大人でも最初は難しく感じられるため、授業を担当する先生は自分で使いこなせるよう事前に練習しておく必要があります。

 ステージ8では、対人関係上の不安をテーマに、自他ともに不安になりにくいコミュニケーションの方法を学びます。対人不安を最終回のステージ8で扱うことにしたのは、思春期に特に増える不安要素であるためです。プログラムを通して、アサーティブコミュニケーションや自分を主語にする話し方(Iメッセージ)などを学びます。また、相手とのパワーバランスからアサーションが難しい場合の工夫についても共有します。

 以上が、「勇者の旅」後半部分の大まかな内容です。子どもたちからは、「勇者の話し方を知ってから、友達と話しやすくなった」「○○だったらどうしようと心配になったときも、勇者の考えを思い出したら不安が小さくなった」などの感想が寄せられています。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集