【「隠れ教育費」からの問題提起 (2)】制服・体操着

福嶋尚子 千葉工業大学教育センター准教授

この連載の一覧

 コロナ禍で最も必要性が問い直された隠れ教育費と言えば、制服だろう。2020年3月に突如始まった全国一斉休校は、長いところでは3カ月続いた。この影響で年度開始が遅れ、真夏も平常授業のために登校を求めるようになった。さらには、感染対策の一つである洗濯が容易ではない点や、着替え場所が十分に確保できず密回避が難しいなどの点から、当たり前だった「制服登校」が再考を迫られ、体操着やジャージでの登校を認める学校が増えた。20年度に入学させた保護者は「1年間でほとんど制服を着てない」と嘆いた。

岐阜県立岐阜北高校の制服と私服別のアンケート結果(2021年3月公表)

 制服類の値段は学校によって異なるが、通常は上下セットで3~4万円ほどはかかる。ここにシャツやネクタイなどが加わり、セーターやベルトなどを指定品にしているところもある。夏物と冬物が別の場合はさらに1万5千円ほどかかる。1着ずつそろえても全身で8万円かかる計算だ。感染対策のため洗い替え用を買い足せば、さらに金額は上がる。それに対し体操着は上下で4~5千円、ジャージ類は8千~1万円ほどで済む。比較的洗濯が容易で買い足すにしても安価ということもあり、コロナ禍においては制服ではなく体操着やジャージが「ヘビロテ」された。

 しかし、実は体操着やジャージも生地が分厚く、真夏は暑い。また、乾燥に時間がかかることも多い。加えて、体操着やジャージには名前が刺しゅうされていることもあり、防犯面から見ても学校外で着用させることには心配の声が上がった。そこで、体操着やジャージでの登校をさらに超えて、Tシャツ登校や私服登校を認める学校も出てきた。

 例えば、岐阜北高校では20年度末に「制服について考える週間」を設け、制服と私服の選択制を試行的に導入し、生徒・保護者・教員にアンケートを取った。その結果、「一体感が欠如する」「服装が華美になる」「貧富の差が出る」などのよくある懸念は緩和され、その後期間を限定して部分的な選択制を導入することとなった。

 22年度の幕開け、「入学式までに制服が届かない」という見出しが大々的に報道されると、「これを機に制服廃止を」という声も上がった。コロナ禍を経験して、「制服の必要性に対する世論が変わった」と実感する出来事だった。

 着用を一律強制できない服は、すでに制服ではなく標準服だ。保護者は使用頻度の低い高額のアイテムを買わずに済み、翌日の登校までに洗濯の負担を負うこともない。子どもは標準服も含む選択肢の中から自ら着たい服を選び、快適に学校で過ごすことができる。学校としても制服指導を行う負担が減る。多様性が尊重された学校は、三者にとって心地良いものとなる。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集