【「隠れ教育費」からの問題提起 (3)】個人持ち教材

福嶋尚子 千葉工業大学教育センター准教授

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 小・中学生のうちは、授業料・教科書代が無償だ。しかし、それ以外のドリル・ワークなどの補助教材や算数セット、アサガオ・セットなどの個人持ち教材の多くは私費負担である。その上、どんな教材を授業で使うかは学校によって異なるばかりか、学年や教科、担当教員によっても異なる。学校教育法34条4項において、教員は教科書以外の教材について「有益適切なものは、これを使用することができる」と規定されているからだ。

 では現在、この補助教材選定権は自覚的に行使されているのだろうか。補助教材選定が行われる時期は自治体により異なるが、多くの場合、年度初めの忙しい時期に数日間で行われる。異動や担当学級・学年の変更などがあるこの時期に、補助教材選定が十分に吟味された上で行われているかというと疑問が残る。実際には前年度その学年で使っていた教材を踏襲するか、「以前これを使ったので同じものだとやりやすい」と担当教員の裁量で変更するかのどちらかであると聞く。

 他方で、保護者の側からすると、「上の子の時よりも下の子の方が教材の集金額が高い」というようなことが起こり得る。もちろん、集金額が多少高くても、ワークやドリルは書店より安価な学校販売価格で売られていることもあり、「子どもの学びの役に立つのであれば」と、多くの保護者はきちんと支払う。しかし、使い切っていないワークや教材を目にすると、やはり「もったいない」と感じるのは当然だろう。「実はこのワーク、問題数が多くて解説が不十分なので使いにくいんですよね」などと話している教員がいたら、怒りが湧いてもおかしくない。

 2020年度以降は、オンラインで子どもに課題を出すため、改めて教員が補助教材を見直す機会もあったのではないだろうか。使い勝手や難易度、情報量や価格などについてゆっくりと考えることもできたかもしれない。同時に、休校や学校閉鎖などがあったことで授業期間や内容が変わったこともあり、使い切れなかった教材の返金作業に追われたという事務職員の悲鳴も聞こえてきた。

 この20年度の「改めて補助教材を見直す」という教材評価の取り組みを、1年に1回、少しでも余裕がある時期に行うことができないだろうか。適切な教材評価を通じ、より使いやすく、子どもの実態に合った教材を選ぶことができれば、翌年度の授業が進めやすくなる。加えて不必要な教材が減り、少しでも安価な教材が選ばれることで、私費負担も減る。教材評価の時期を変更することで、教材選定権を適切に行使できるのである。

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