【子どもの自殺を食い止める(2)】報道が子どもに与える影響

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

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 コロナ禍における若者の自殺の急増について、厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センター(以下、自殺対策推進センター)は、「著名人の自殺及び自殺報道の影響」をその要因として挙げている。自殺報道の影響を「ウェルテル効果」と言う。自殺が大きく報道されたり、自殺の記事が手に入りやすかったりする地域ほど自殺率が高く、その影響は若年層が受けやすいことが分かっている。1986年に人気アイドルが自殺し、過激な報道がなされた際にも、若者の自殺が前年より245人増加している。

 世界保健機関(WHO)は「自殺対策を推進するためにマスメディア関係者に行ってもらいたい基礎知識」の中で、やってはならないこととして「目立つように配置しない」「過度に繰り返さない」「センセーショナルに表現しない」「自殺に用いた手段・発生した場所を詳細に伝えない」「自殺の方法を詳しく報道しない」などを挙げている。これらのガイドラインはあくまでも指針であって、法的拘束力はない。昨今の自殺報道は以前に比べてかなり自主規制され、報道の最後には相談先も紹介されるなど、さまざまな配慮がなされている。しかし、著名人の自殺がニュース速報で流れ、繰り返し報道されたり、場所や手段が報じられたりするケースもある。手段や場所が報じられると、憧れていた子どもたちはその人と同じ場所・同じ方法で死にたいと思うようになり、希死念慮のある人は「この場所(方法)なら死ねる」という思考に至る。

 今年2月からは、ウクライナに関する惨事報道も続いている。人為災害の惨事報道は心理的な影響を及ぼすことがアメリカの同時多発テロのなど過去の研究でも明らかになっており、そうした情報から子どもたちを守る必要がある。

 自殺報道・惨事報道に接した量が多いほど、心理的な影響は大きい。テレビをつけっ放しにすると、無意識のうちにそうした報道を見続けることになる。ネットでの情報収集も検索し始めたらきりがなく、関連情報が次々と表示される。テレビをつけたままにしたり、際限なくネットを見続けたりすることを避け、情報収集は時間を区切って行うよう子どもたちに伝えていく必要がある。

 これらの惨事報道によって、大人たち自身も傷ついている。報道にストレスを感じることを自覚し、自分自身も情報と距離を保ちながら子どもの心も守っていけたらと思う。

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