【子どもの自殺を食い止める(3)】日本の子どもたちの幸福度

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

この連載の一覧

 日本は教育・医療・福祉の制度が整っており、世界の中でも裕福な国の一つである。ユニセフの子どもの幸福度調査によると、先進国38カ国の中で、日本の子どもの幸福度は20位となっている。詳細を見ると、「身体的健康度」は世界で一番良い状態であった。身体的健康度は子どもの死亡率と肥満度が指標となっている。他の先進国に比べて、日本は事故で亡くなる子どもが少なく、また食生活やライフスタイルの面で優れていると言えよう。

 ところが、「精神的幸福度」だけで見てみると、先進国38カ国中37位と、下から2番目となっている。精神的幸福度は、生活に満足している子どもの割合と子どもの自殺率が指標となる。日本は「生活に満足している」と答えた子どもの割合が、最も低い国の一つである。生活全般への満足度を0から10までの数字で表す設問で、「6以上」と答えた子どもは 62% で、4割くらいの子どもは今の生活にそれほど満足していない。さらに、子どもの自殺率は非常に高く、その結果として精神的幸福度の低い国となっている。

 大人たちは「今の子どもは打たれ弱い」「自分たちが子どもの頃は、親や教師はもっと厳しかった」とよく言うが、果たして今の子どもたちは本当に弱いのだろうか。

 私たちの子ども時代は、学校と家の行き来の世界で済んでいたが、今の子どもたちはSNSの世界も持っている。さらにSNSの世界の中でも個人が特定されるアカウント、匿名のアカウントを持ち、幾層もの世界で生きている。SNSの情報伝達のスピードは非常に速く、ひとたび何か失言したら、揚げ足を取られて一瞬で拡散される。匿名性の高い世界は寛容性が乏しく、子どもたちは誹謗(ひぼう)中傷・バッシングにさらされがちだ。非常に複雑で速度の速い、過酷な社会で生きていることを感じる。

 また、昔は許容されていた体罰も今は禁止され、体罰に対する価値観も世代によって異なる。それが当たり前だった世代には、たたかれずに育っている今の子どもたちが弱く見えるのだろう。しかし、それが許容されない時代で暴力や暴言を受けることは、「被害」であるという認識が今の常識である。子どもたちが打たれ弱いのではなく、同じ事象でも「良い」とされていたことが、今ではハラスメントとなる時代なのだ。

 日本の子どもたちが今の生活に満足できていないことや、子どもの自殺が多いことは、「子どもの問題」ではなく「社会の問題」であると捉えて取り組む必要があろう。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集