【子どもの自殺を食い止める(4)】何が原因で子どもは自殺しているのか

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

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 子どもの自殺の多くは、「原因が分からない」ものである。遺書が残っていないことや自殺をほのめかす言動がないこと、家庭環境に問題がないことも多々ある。自殺の原因は一つではなく、その子自身の個別の問題、家庭の問題、学校の問題などさまざまな要因が重なっている。

 子どもの自殺の原因は、「いじめ」だと多くの人が思いがちだが、遺書やメモの残っている自殺に関する警察庁の調べによると、2020年の児童生徒の自殺の原因・動機の1位は「進路に関する悩み」で、次いで「学業不振」、「親子関係の不和」、「家族からのしつけ・叱責」と続いている。

 このデータは、虐待や貧困、ヤングケアラーなど特別な事情、複雑な事情を抱える子どもだけではなく、ごくありふれた家庭の中で生じる「親とうまくいかない」「成績が落ちた」などのつまずきで自殺が起きることを示唆している。世の中が「子どもの自殺の原因はいじめ」と思い込んでいるのは、いじめによる子どもの自殺が報道されるのに対し、家庭の問題による自殺は取り上げられないためだと考える。

 自殺の原因は一つに絞れるものではなく、幾つかの要因が重なって自殺行動は起きる。例えば、いじめが原因と思われる自殺でも、「いじめを相談できる相手がいない」「家庭内での問題もあり親に相談できない」「社会的サポートがない」などの社会的要因もあれば、「周りに心配を掛けたくない」という想いが強かったり、自身が問題を認識できていなかったりなど個人的要因もある。

 学業・進路問題による自殺の背景についても、「成績が落ちると家族から叱責される」「進路に関して親の理解が得られない」「経済的な問題を抱えている」など、家族の問題の延長線上に学業の問題があることも考えられる。学業問題は学力の低い生徒にだけ起きるものではなく、上位にいる生徒もまた、「周りの期待を裏切らないように」「トップから落ちないように」と必死になり、追い込まれている。周囲から「教育熱心」と思われる保護者が、子どもを窮地に追い込んでいるという視点も忘れてはならない。

 自殺の原因は多様で、複数のものが重なって起きる。いじめ対策はもちろん大切だが、いじめ対策だけで自殺対策は成り立たない。自殺の背景として親子関係・学業問題など、大人が関わっている問題が原因で多くの子どもが自殺していることを私たちはしっかり認識しておく必要があるだろう。

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