【子どもの自殺を食い止める(5)】SOSを出せない子どもたち

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

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 子どもの自殺の多くは遺書などが残っておらず、原因が分からないものである。「前の日まで普通に(むしろ明るく)過ごしていた」「家庭にも特別問題はなかった」という子が何の前触れもなく自殺することも多々ある。残された人たちは「なぜ」という答えのない問いに苦しむ。

 「死にたいです」と直接的に言ってくる子どもは、それほど多くはない。私はよく「死にたいと何度も言ってくる子がいて困る」との相談を受けるが、死にたいという言葉さえ言わずに亡くなる子のことを思うと、言葉にしてくれることはありがたいと感じる。救いようがあるからである。教師から見て「訴えの多い子」は、何らかの形で助けを求められる「援助希求能力の高い」子たちと言える。そして大人を信頼している子どもでもある。

 子どもたちにSOSの出し方教育をすると、「助けを求めていいと分かった」と多くの子どもが感想を述べる。子どもたちは心が折れるのは良くないことだと思っており、「誰にも頼らずに解決しなければならない」と感じているのである。昨今、レジリエンス教育の中で「折れない心を作る」と言われることがあるが、そもそもレジリエンスとは困難な状況から回復していく力であり、折れたりくじけたりしてもそこから立ち上がっていく力である。心は折れてもいいし、失敗してもいい。そこから立ち上がる力をみんな持っている。これがレジリエンス教育で伝えるべきことである。

 SOSの出し方教育での感想には「親に心配を掛けたくない」と親を心配していたり、「先生に駄目な人間と思われたくない」と周りの評価を気にしていたりする様子が書かれている。実際に、親に「死にたい」と言ったら「そんなことを言わないで」と大泣きされ、以来、親に悩みは言わないようにしている子どももいる。

 「折れない心をつくらないといけない」という価値観を植え付けた結果、心が折れたときは「駄目な人間だ」と子どもたちは思うようになったのかもしれない。そして、子どもがSOSを出すと保護者は動揺し、教師は「問題児」と見なすようになり、結果として子どもは大人にSOSを出しづらくなっているように思う。

 なんらかの形で訴えの多い子を「問題児」、SOSを出さない子も「困った子」と思いがちだが、それは受け取る大人側の問題である。子どもの訴えを大人の尺度で評価せずに受け止め、自分の抱えていることをうまく表現できない子には「大丈夫、そばにいるよ」というメッセージを伝え続けていきたい。

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