【子どもの自殺を食い止める(6)】自殺予防教育の現状~自殺予防教育が進まない要因~

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

この連載の一覧

 子どもの自殺が減らない中、2016年に自殺対策基本法が改正され、若年層の自殺対策が重要課題となった。その17条3項で、「学校は(中略)児童、生徒等に対し、(中略)困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育(中略)心の健康の保持に係る教育又は啓発を行うよう努めるものとする」と、自殺予防教育の努力義務化が示された。以来6年が経過するが、ほとんどの学校が自殺予防教育を実施できていない。

 なぜ、自殺予防教育は進まないのか。自殺予防教育・SOSの出し方教育は各自治体(市町村・都道府県)の自殺対策担当課で計画を立てる。「3年以内に何校の学校で実施する」など、具体的な目標値をそれぞれ挙げている。しかし、この計画すら立てられていない自治体もあるのが実情だ。自殺予防教育をするようになったものの、どのような内容をどの学年に誰がするかなどの、具体的なガイドラインは示されず、多くの自治体が立ち往生しているような状況がある。現場の保健師や行政職員が、教材・カリキュラムづくりからやるのは負担が大きすぎる。また、自殺対策担当課で計画を立てたとしても、教育委員会や学校の理解と協力がないと実施には至らない。

 授業を実施する人も、保健師や学級担任など自治体によってまちまちだが、教員もスクールカウンセラーも自殺予防教育の指導方法を学んでいないことから、自治体に丸投げするのは無謀であると筆者は感じる。自殺予防教育を行うための丁寧なガイドラインと、講師派遣など手厚い支援が必要である。

 今でさえブラックと言われる教職員の労働環境の中で、ゼロから自殺予防教育の教材・カリキュラムづくりの時間の確保をするのは非常に難しい。自殺予防のために、教職員が過労で自殺に追い込まれるようになるのは本末転倒である。

 一方で、後回しにされてきた子どもの自殺対策が今すぐに取り組むべき課題であることも確かだ。各自治体の自殺対策課と教育委員会が連携し、教材・カリキュラムづくりや授業の担い手の育成を行ったり、小さな町では広域で学校間連携を図って教材を共有したりする必要がある。福島県精神保健福祉センターは県教委と協働で高校生向けの自殺予防教育教材を作成し、各学校でカスタマイズして使えるようにWebで公開している。まずは自分の学校の自治体がどのような自殺予防教育計画を立てているのか、一人一人が関心を持ってほしい。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集