【「隠れ教育費」からの問題提起 (9)】オンライン学習費

福嶋尚子 千葉工業大学教育センター准教授

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 小中学校に対しては「GIGAスクール構想」(2019年12月)で、1人1台端末の整備が立ち上がっていたが、これがコロナ禍で急加速したのは周知の通りである。令和元年度補正予算・令和2年度予算にて本事業は前倒しで進められ、小中学生には公費による端末が配備された。しかし、高校は同構想の対象とはならなかったため、全額公費負担とする都道府県(21自治体)と、全額保護者の私費負担とする都道府県(18自治体)とで対応が分かれている (NHKニュース、22年1月11日)。

 今回は、小中学生の端末代を国が負担したのでよかったが、首相の諮問機関「教育再生実行会議」の第12次提言(21年6月3日)では、端末について「将来的に BYOD(Bring Your Own Deviceの略称。個人の端末を学校に持ち込むこと)への移行も見据え」(カッコ内引用者)としており、今後は小中学校入学時の学用品として私費負担を求められることになるかもしれない。仮に小学校で1台あたり5~10万円に上る端末の私費負担を求めれば、一人当たりの学校教育費は一気に18年の2倍~2.5倍になる計算だ。

 オンライン学習にかかる費用は、端末購入代だけではない。学校のWi-Fi環境、端末の充電保管庫、端末で利用するソフトやアプリケーションの利用料などは本来公費負担とすべきだが、これが十分ではないために充電のために子どもに端末を持ち帰らせる、利用料を私費負担とする、というケースもある。その他、コロナ禍により「校内におけるICT環境の整備」から「校外でも学べるリモート環境の整備」に比重が移ったこともあり、端末持ち運び用のケースやタッチペンなどのアクセサリー、家庭でのWi-Fi環境の整備、損害保険料、損壊時の修理費用などが、私費負担に転嫁されている自治体もある。

 貧困世帯に対し、こうした私費負担をカバーするために「オンライン学習通信費」という費目を就学援助制度で設けている自治体もあるが、数としてはまだ少ない。紙の教材や実際に手で触れることのできるキット教材が、そのままデジタルに置き換わるとも限らない。その意味で、オンライン学習に関わる費用は現時点では「純増」になっており、家庭の負担はかなり重い。将来的にも増える可能性がある。

 端末が配られるだけで学校が「GIGAスクール」になるはずはない。端末周辺にも多くの費用負担が発生する上、本来は端末を活用して授業を行う教員に研修を実施するなど、ソフト面の条件整備も重要だったはずだ。学校現場から自治体・国へ、より学校への条件整備と就学支援の取り組みを求めていくことが必要だ。

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