【子どもの自殺を食い止める(8)】SOSの受け止め方

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

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 SOSの出し方教育の中で「3人目までの大人に相談して」と児童生徒には伝えている。「1人目の大人が『君だけではない』と話を聞かなくても、2人目の大人が『あなたの頑張りが足りないからだ』と言っても、3人目まで諦めないで。あなたを守りたいと思っている大人は必ずいるから」と。

 筆者の経験上、SOSの出し方教育をすると、年齢が低い子ほど比較的すぐに悩み事を大人に話すようになる。

 一方で最大の課題は、子どもがSOSを出したときに大人がそれを受け止められるかだと筆者は感じている。SOSの出し方教室の感想文からも分かるように、子どもたちの多くは「弱音を吐いては駄目だ」「言うと評価されたり叱られたりする。あるいは大人を失望させる」と思っている。SOSの出し方教室の後に勇気を振り絞ってSOSを出したのに、「頭ごなしに叱られた」「説教をされて話を聞いてもらえなかった」となると「話さなければよかった」となり、「やっぱり誰も分かってくれない」とさらに状況を悪化させるリスクがある。

 多くの大人は「自分は受容傾聴できている」と思っている。実際は、子どもが学校へ行きたくないと言えば「学校は行かないと駄目」、成績が落ちたと言えば「机に座る習慣を付けなさい」などと価値観を押し付け、アドバイスをしがちである。「学校に行きたくないんだね」とまるっと受け止めて受容し、「なぜ行きたくないの?」と詳しく尋ねる。そうした傾聴の作業をおろそかにして、すぐに解決できるようなアドバイスを先にしてしまうのである。

 結果、子どもたちは「やっぱり分かってもらえない」「聞いてもらえなかった」という感覚を抱くようになる。SOSの出し方教育で中学生や高校生が「どうせ大人は話を聞いてくれない」と諦めの感想を述べることがよくあるが、それは話を聞いてもらえない経験を積んできた結果なのだと思う。

 大人の多くは、子どもが何か弱音を吐いたり悩みを打ち明けたりしたときに、励まそうと思ったり、解決を急いだり、「先生に話してすっきりしました」と言ってほしくて人生の先輩として何か言おうと思ったりする。意外と大人は、自分本位で子どもの話を聞いている。

 SOSを出したとき、ジャッジされたり価値観を押し付けられたりすることもなく、ありのままをまるっと受け止めてくれる安心で安全な他者がいることがまず大切なのだと感じる。人の性格はすぐには変えられない。でも「まるっと受け止めて、詳しく聞く」というコミュニケーションスキルで「振る舞い」を変えることはできる。SOSを受け止める振る舞いを再考してほしい。

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