【子どもの自殺を食い止める(9)】希死念慮のある子どもへの対応~TALKの原則~

髙橋聡美 一般社団法人髙橋聡美研究室代表/中央大学人文科学研究所客員研究員

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 子どもの自殺の原因は不明のケースが最も多く、何の兆候もなく、ある日突然亡くなる子も少なくない。教育現場にいると「死にたい」と直接的な表現で訴えてくる子どもより、「この子は死にたいと思っているのではないか」と思われる子どもと出会う方が多いように感じる。

 死にたい気持ちを「希死念慮」という。文科省は「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」の中で、「死にたい」と訴える子や、自殺の危険の高い子に出会ったときの対応として「TALKの原則」を推奨している。

 まず、 言葉に出して心配していることを伝える(Tell)。そのことで子どもたちは「この人は、私のことを気に掛けてくる」と分かる。その声掛け自体がケアになると同時に、子どもに「相談してもいい相手」と認識してもらえ、援助希求能力が高まる。

 次に「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる(Ask)。希死念慮を確認すると、刺激してしまうのではないかという質問をよく受けるが、その子が死にたい気持ちがあるかどうかは、本人に聞かない限り分からない。「消えたいと思っちゃう?」と間接的な表現を用いてもいいので、確認する。

 さらに気持ちを傾聴する(Listen)。前回、「SOSの受け止め方」でも説明したように、アドバイスや激励をするのではなく、気持ちをまるっと受け止め、詳しく聞き、子どもの情景を見るようにする。

 最後に、安全を確保する(Keep Safe)。自殺の危険性が高いと判断したら、他の教員や家族などからも、適切な援助を求める。自殺の準備をしているなど緊急性が高い場合を除き、子どもに「あなたの命を守るために、このことを他の先生や家族と共有していいか」と尋ねるように努めてほしい。「秘密にして」と言う子どもに対しては、その意思を尊重しつつ、「他の人もきっとあなたを守りたいと思っている」と伝え、可能な限りコンセンサスを得るプロセスを大切にしてほしい。

 そして、保護者に伝えることをためらう子どもには、なぜ家族に言いたくないかを傾聴してほしい。複雑な事情を抱える家庭ほど子どもは秘密にしたがるが、教師が一人で抱えるには重過ぎて、強いストレスを受ける。その結果、その子への支援がうまくいかなくなったり、燃え尽きて支援が止まったりするなど、子どもの支援そのものに支障が出る。長く確実に支援するためにも、教師のメンタルヘルスを維持する上でも、課題を共有して子どもの安全を守ることが重要である。

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