名教師たちの失敗学 2

教職を続ける中で、失敗やミスは起こしたくないと思っても、時に起きてしまう。しかし、見方を変えれば、さまざまな失敗は、教師としての成長や飛躍の大きな糧になる。名教師たちの失敗エピソードから、成長への学びやヒントをもらった。


 

「子どもは分からない」が大前提

北海道上士幌町立上士幌中学校教諭 石川晋

 

t20160120石川晋教諭クラスのAちゃんの進路が決まらない。すでにクラスの子たちの大半が決まっているのに、Aちゃんだけが決まらない。ついにたまりかねて、玄関で登校するAちゃんに声をかけ、朝のホームルームまでの時間、面談をする。15分くらい話しただろうか。最後にAちゃんは、「先生が、こんなに私について一生懸命考えてくださっているとは思いませんでした」と言った。

それを聞き、職員室に戻った後、泣きそうな気持になる。ぼくはこの1週間、Aちゃんについていろいろ考えていたのだがなあ、ぼくの思いはAちゃんに全然伝わっていなかったのだなあ。

Bちゃんと二者面談をする。「最後に何か話しておきたい点はありませんか」と訊くと、Bちゃんが、「○美ちゃんと△絵ちゃんが、この前、美術の時間に消しゴムの貸し借りをしました」と、おもむろに話しはじめた。

えっ、と思わず聞き返し、「もう少し詳しく教えて」と訊くと、その時の様子を話しはじめる。美術の授業中に突然、○美ちゃんが△絵ちゃんに「ねえ、消しゴム貸してくれない」と言い、△絵ちゃんが貸したというのだ。周りの子たちはその瞬間、思わず息を呑んだ。そりゃあ、そうだろう、この2人はもう、1年以上口も利かない関係が続いているはずなのだ。

実は冒頭のAちゃんのエピソードの後、ぼくはそれまで以上に、個人面談を行うようになった。中学校は忙しく、年間予定では、1回程度しか面談週間がない。でも、ぼくは最低でも学期に1回は実施するようにした。

子どもについては分からないというのが前提だ。血を分けた肉親についてだって、結婚した相手だって、何もかも分かることはできないのだ。まして、クラスの子たちを分かっているなど、おこがましくてとても言えない。思春期の中学生が自分の考えや本音をペラペラなんでも話すわけもない。

「分からない」を前提に、少しでも分かるために一生懸命話し合う。そういう必要性をAちゃんとの一件で学んだ。そうやって、個人面談を続けていくと、それまで分からなかったクラスの子どもたちの心の動きなどが、以前より分かってくるようになった、○美ちゃんと△絵ちゃんについてのように。

教室の本質は「ハプニング」である。教室では、そもそも教師の予測のつかない物事がたくさん起こるのが本質、という意味だ。それができるだけ起こらないよう、子どもたちが安心安全に暮らせるよう準備するのは必要だ。

しかし、ブルドーザーで全てを整地するようなものになってはならない。そもそもぼくのクラスは、いつもうまくいかない人間関係も、しょんぼりな発表活動もいっぱいある。でも、ハプニングに身をゆだね、その分一人ひとりとたくさん話しながら、子どもたちが咲かせるいろいろな花を楽しめる教師がとてもいいのではないかと思っている。

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