理科で深い学びをデザインする 2

「理科を通して、子どもに、豊かな心の裏付けになる力をつけたい。それができる奥行きのある教員を増やしたい」との思いを持つ理科教育のプロから、理科教育で深い学びをデザインしていくための引き出しを増やすヒントをもらう。


 

学習の延長線上にキャリア教育を

宇都宮大学教職大学院教授    久保田 善彦

tp2016012501久保田先生「わー、きれい。どうしてピンクなの?」

近隣の農家の方から、作物の種子を見せていただいた児童の反応です。「種には、種子用と食用があります。薬剤処理した種子を間違って食べないように、わざと派手な色が付けられています」と回答をいただく。さらに、「日本は、ほとんどの種子を輸入しています。海外からの長距離輸送や保存に耐えられるように、薬剤処理をしているんだよ」と、世界の種子事情についても教えていただきました。

これは、小学校5年生「植物の発芽と成長」の単元で、学習の発展として、農家の方をゲストに迎えた授業の一場面です。この授業では、作物を作るためには、その作物に合わせた水や肥料を与えなければいけないことも教えていただきました。

児童は、「トマトは水がきらいで、さつまいもは肥料がそんなにいらないことがわかって、水や肥料をたくさんあげたらいいわけではないということがわかりました」「(植物は)原産地によって、水や土の好き嫌いがある」と感想を述べています。植物の成長には、水・日光・肥料が必要だと学びましたが、植物によって適量が違うのを知ります。理科の学習を、家庭菜園の栽培など実生活に生かすには、より深い知識を身に付ける必要があると感じたようです。

その他にも、農家の方は、おいしい野菜を作るため常に専門知識を学び、根気強く試行錯誤を繰り返していることを知ります。「ぼくは農家の人はもうなれてやっている(毎年、同じことを繰り返している)のだろうなと思っていました。しかし本当は、いつも工夫していることがわかりました」と、職業観や勤労観を知ることにもつながりました。「野菜を育てるのも大変なんだなぁと思いました。失敗したらその原因を調べるから、次やるときからは同じ失敗をしないのだなぁと思いました」「私は授業で失敗してもぜんぜん考えたことがないので、何で失敗したのかを考えて取り組みたいです」と、仕事は問題解決の連続である現実を理解し、自分の生活に生かそうとする児童もいます。

国際数学・理科教育調査(TIMSS2011)によれば、「理科が生活に結びついている」と答えた中学生は57%(国際平均83%)、「理科を使うことが含まれる職業に就きたい」と答えたのは20%(国際平均56%)です。日本の子どもたちは、実社会と関連した設問への肯定的な回答は、他国に比べて低いのが現状です。理科教育の延長線上にキャリア教育の取り組みを位置付けることも重要です。その手だての一つが、社会人講師を招くことです。理科授業に社会人講師を招くことで、単元の学習内容の延長線上に、職業の知識や技術を位置付け、理科学習に有用性を実感させることが目的です。

一方で、社会人講師の話が高度である、授業内容と結びつかないなどの問題も考えられます。教師はコーディネーターとして、講師と児童生徒の橋渡しができるとよいでしょう。最新の理科の教科書には、職業人へのインタビューなど、キャリア教育を意識したコラムを見かけます。これらも上手に活用してください。

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