理科で深い学びをデザインする 3

「理科を通して、子どもに、豊かな心の裏付けになる力をつけたい。それができる奥行きのある教員を増やしたい」との思いを持つ理科教育のプロから、理科教育で深い学びをデザインしていくための引き出しを増やすヒントをもらう。


 

子どもが得る能力を意識した学習を

大妻女子大学家政学部准教授    石井 雅幸

tp2016012801石井先生平成20年告示の学習指導要領では、小・中・高校の理科の学習内容のつながりが、強く意識されている。その現れとして、小学校の学習内容区分がこれまでの3つからA、Bの2区分となった。このことにより、小・中学校の学習内容のつながりを表現しやすくなった。また、小・中・高校の学習指導要領解説「理科編」に、小・中あるいは小・中・高校の理科の学習内容のつながりを、一覧表で示している。

同解説に示された小・中・高校の理科の学習内容のつながりは、ある意味では理科の親学問である自然科学の学問体系に基づいてつくられている。そこで、あらためて子どもの自然の認識に基づいて学習内容のつながりを整理することが求められるといえる。

例えば、現行の学習指導要領で示されている学習内容をもとに、電気と天体に関する学習内容を挙げて、子どもの認識から学習内容のつながりを考えてみる。

電気に関しては、小学校3年生で、豆電球が点灯する回路は電気が通る輪でつながっていることを学習する。4年生では、3年生の電気の通る輪で豆電球が点灯するのを基にして、電気の通るあるいは流れる向きや、流れる強さの大きさとモーターの回り方の変化の関係を扱う。5年生では、流れる電流の強さとできる磁力との関係や、流れる向きとできる磁石の極の変化の関係を扱う。そして、6年生では、流れる電流の強さと発熱量の違いの関係を扱う。このように、小学校ではスパイラル的に電気が流れているという概念を獲得していき、中学校の電流、電圧、抵抗の関係や、電流と磁界の関係を認識していくような学習のつながりを構成している。ここでは、子どもの「電気は流れる」という認識が核になっている。

同様に天体の学習内容も、3・4年生の太陽や月の一日の動きでは、一つの天体の天球上での動きを扱う。4年生の星の動きでは、星の集まりである星座の天球上での動きを扱う。星の集まりの動きは、面の動きとして扱うことになる。6年生の月の満ち欠けの仕組みでは、天球上での時間経過に伴う太陽と月の位置の変化と月の満ち欠けのように、時間経過と位置の変化を結びつけて認識していく。この認識を基にして、中学校では、太陽系の惑星の運行などを扱う中で、地球の外から宇宙を見る視点で天体の運動を考えることになる。このように、天体の学習内容は小・中・高校で、点から面、面から空間を認識していくように学習が展開していくととらえることができる。

理科の学習内容は、自然科学の学問体系に基づいて構築されているが、子どもが理科の学習内容を学び、認識していくととらえ、これらの学習内容を学ぶことを通して、どのような能力を獲得していくことができるのかを考えていく必要がある。これまでの、学習指導要領に載っているから、教科書に載っているから教えるという考え方から、この学習を通して何を子どもが学ぶのか、何ができるようになるのかを考え、学習を組み立てることができる教員が強く求められるであろう。

今後の教員は、教材解釈、教材構成力、カリキュラム開発能力を持つ必要があるといえる。

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