理科で深い学びをデザインする 4

「理科を通して、子どもに、豊かな心の裏付けになる力をつけたい。それができる奥行きのある教員を増やしたい」との思いを持つ理科教育のプロから、理科教育で深い学びをデザインしていくための引き出しを増やすヒントをもらう。


 

批判的思考と構造化で問題解決

群馬大学教育学部教授    益田 裕充

tp2016012901益田先生顔理科では、小学校5年生で振り子の周期を学習する。小学校の理科は問題解決による授業となるので、そのはじまりで問いが立てられる。ある授業の問いは「振り子が一往復する時間は、何によって決まるのだろうか」であった。一方、別の授業の問いは「校歌にあわせて振り子をふるには、どのようにするのか」であった。どちらも、この問いの後、振り子の周期に影響する条件をつかませるために、観察・実験の計画を立案させる授業であった。

「何」と条件を問う問いと、「どのように」と方法を問う問いでは、その質が異なるのが分かる。前者に比べ、後者の「どのように」という問いが、計画・立案の世界を広げている。これから求められる資質・能力の育成と授業のはじまりの問いは無関係ではない。資質・能力の育成という観点から、授業のはじまりの問いの質が吟味される時代が到来している。では、この問いは、その後の科学的な探究の過程にどのように影響するであろうか。

平成27年度に行われた全国学力・学習状況調査(中学校理科)の問題8(3)(http://goo.gl/yDBVWf)には、問題や課題としての問いを解決する過程を構築する上で、重要な観点が示されている。それは「課題と考察を正対させる」過程を構築することにある。つまり、授業のはじまりの問い(問題・課題)に正対した答えを表出する過程が考察であり、両者の関係の構築こそが問いを解決する授業の骨太の方針ということである。では、この骨太の方針のもとで、例えば批判的思考は、どのように形成されるであろうか(ここでは児童生徒の批判的思考の表出を「そうかな? そんなことないな。私はこう考える」と指摘できることとしたい)。

授業のはじまりで、まず問い(問題・課題)に対する答えを予想する。予想は多岐にわたるため、教室内に散在する考えを類型化することとなる。こうして表出した仮説を検証するために、観察・実験の計画を立てる。そこで、仮説として示されたいくつかの要因に着目し、その要因から検証の対象とするべき条件を決め、その条件に具体的な数値を設定して実験の計画が立てられる。計画した実験が遂行され、結果が表出した後に、仮説と結果の比較を通して、仮説が立証される事実が示されたのか、あるいは仮説がくつがえる事実が示されたのかが検討され、問い(問題・課題)に正対した答えが導き出されることとなる。

このように、問いを解決する授業は、はじめから終わりまでを順にたどる単純なステップではなく、構成される各場面を有機的に関連づけ、一連のストーリーとする「構造化」の観点が重要となる。こうして、批判的思考を形成するために「自分の考え(予想・仮説)がくつがえる事実が明らかとなる」経験を意図的に組み込むことも考えられる。

授業という多様性の中に存在する共通性を吟味し、一連の過程を構成する各場面間の関係を構築することで科学的な探究の過程を成立させ、協働的な学びを通して資質・能力を育成したい。

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