名教師たちの失敗学 3

教職を続ける中で、失敗やミスは起こしたくないと思っても、時に起きてしまう。しかし、見方を変えれば、さまざまな失敗は、教師としての成長や飛躍の大きな糧になる。名教師たちの失敗エピソードから、成長への学びやヒントをもらった。


 

負けに不思議の負けなし

兵庫県赤穂市立原小学校教頭 古川光弘

 

p20160216失敗学3_古川光弘教頭

古川光弘さんは、教職30年を超え、2年前から兵庫県赤穂市立原小学校の教頭を務めている。児童の集中力を高め、意欲的に学ぶ授業の工夫など、日々さまざまな実践に挑戦し、各地のセミナーで積極的に情報発信を続けている。それでも、失敗や悩みは尽きないと、はにかむ同教頭から、初任者のころの失敗とそこから得られた学びを聞いた。

■若き日の失敗

初任のころは、授業でも学級経営でも、失敗をたくさん重ねました。例えば、漢字小テストの上位成績者を学級通信に掲載したときです。

80点以上の児童の名前と点数を通信に載せ、学習の励みにと、意欲の喚起を促すつもりでした。でも、掲載される児童は限定されます。点数に満たない児童の意欲を、逆に下げてしまう状況を生んでしまいました。今、考えれば、このような結果は容易に予想できます。若さゆえの未熟さでした。

授業では、3年生の理科実験のときに、大きな失敗をしてしまいました。教育委員会が視察する授業研究会のときです。

大根で弾を作って管に詰め込み、それを打ち出す「空気鉄砲」の授業を展開しました。面白い授業にしようという意識だけが先行した結果、児童たちが好き勝手に空気鉄砲を黒板などに打ちまくり、教室は大根汁だらけ。学習目標が達成されない、恥ずかしい授業になってしまいました。ふさわしい学習内容を、熟慮せずに進めた結果で、展開の見通しも未熟だったと反省しています。

教職3~4年目のころです。バレンタインデーを前に、クラスの1人の女児が、教室でチョコレートを配ってもいいか尋ねてきました。私は「教室の中はやめようね」と答えました。しかし、当日、ほかの女児1人が私にチョコレートを手渡そうとしたのです。別の女児にだめと言ったのを忘れて、せっかく持ってきてくれたのだからと、何げなく受け取ってしまったのです。

すると、後日、配るのを禁止した女児が日記帳に「先生は勝手ですね」と書いてきました。その女児が普段おとなしい性格だったのも加わり、私はその言葉にショックを受けました。指導の一貫性や公平さを改めて意識しましたし、教員が持つ児童の一方的なイメージの見直しを迫られました。自分の浅はかさをつくづく反省しました。

■失敗から何を学ぶか

いま振り返ると、どの失敗も「配慮が足りなかった」というのが実感です。ミニテストの失敗では、クラスの全児童への意識が不足していました。理科実験の失敗では、授業を事前にシミュレーションすれば防げました。

失敗は誰にでもあります。くよくよと卑屈になりすぎずに、原因をしっかりと分析して対処方法を考える習慣を付けたいものです。野球の野村克也監督がよく話す言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」があります。うまくいかないときは、必ず原因があるというのです。失敗から学ぶようにしたいといつも考えています。

これから活躍される皆さまへの教師力向上のアドバイスとして、▽授業力を高める▽子どもに媚びず信頼感のある関係を作る▽子ども同士の人間関係力を高める――の3つを贈ります。努力しても、良い結果につながらないときは数多くあります。それでも、あらゆる努力と工夫を重ねるのが、成長のためには大切です。

ただ、日々の教職で、あまりにも疲れているときは、仕事から離れてゆっくり休みましょう。悩んでいるときはなおさらです。つい考えてしまうのが教師の習性ですが、何も考えずに、体力と気力の消耗を防ぎましょう。

それでも考えてしまう場合は、「授業成立」という1点だけを考えましょう。授業が良くなると学級経営など、いろいろな活動が好転しやすくなるからです。私の提案する「10分間パーツ教材」については、本も出ています。参考にしてください。

皆様のご活躍に、大いに期待しています。

関連記事