楽しみながら英語に親しむ 長野県上田市立川辺小学校

「書く」活動も取り入れ 豊富なデジタルコンテンツを活用

目と耳で単語を学ぶ「チャンツ」
目と耳で単語を学ぶ「チャンツ」

「英語ってまずは慣れ親しむことだよね。さあ、どうしようか……」。英語教科化への対応とコミュニケーション能力の充実に力を入れている長野県上田市では、2018年度から小学校外国語活動の教科化を先行実施する。教科化に向け、外国語活動の授業研究を始めた同市立川辺小学校(宮澤剛彦校長、児童数579人)の教員らは思案にくれた。教科になれば、「聞く」「話す」「読む」に加えて「書く」活動も入ってくる。しかし「書く」にはまず、多くの単語や文章を聞き、声に出し、英語に十分慣れ親しむ必要がある。同校の研究グループでは現行の45分授業に加えて、教員、児童が共に楽しみながら英語に親しみ、「書く」活動も取り入れた15分の学習を試行することにした。公開された研究授業では、意欲的に学び、着実に基礎的な力を積み上げている児童たちの様子が見て取れた。


「Let’s open English class.」――授業の開始を告げる高橋和幸教諭の声を合図に、6年2組36人の視線は教室の前の大型モニターに注がれる。同教諭が「JUNIOR HORIZON モジュール105」(東京書籍)を起動。このデジタルコンテンツは、統一補助教材として同市の全小学校に導入されている。間もなく、一定の間隔で刻むリズムに乗って、ネーティブが単語を発声する「単語チャンツ」が始まった。

「cook」「doctor」「dentist」、3語ずつ発声するタイミングに合わせて、モニターには料理人、医者、歯医者のイラストが映し出される。児童たちは全員起立して、イラストを見つめながらネーティブに続いて繰り返し声を出す。中には耳慣れない単語も登場するが、リズミカルなテンポにのって楽しげに発声していた。

続いて、映像教材「中学英語入門」を使用した「書く」活動。同教諭は班のリーダーを集めプリントを手渡し、映像を見た後に回答するよう促した。児童への声掛けは、作業を指示する際も含め全て英語――オールイングリッシュを実践している。

映像は、16年度版の中学英語教科書『NEW HORIZON』(1年生)の「Daily Scene」に登場する「道案内」の場面。同教諭は全編再生した後、教科書本文部分の再生、さらに男女の会話場面では女性の発話部分のみを無声にしてテロップ表示にするなど、児童がきちんと聞き取れているか確認しながら、異なるパターンの再生を繰り返した。こうして十分に映像の内容を消化した後、児童たちは、会話の内容に関する問いと、会話に登場した英文を書き取るプリントに答えを書き込んでいく。おおむね内容を理解し、「Pardon me?」といった決まり文句も正しく書き取っていた。

■デジタルコンテンツの活用で「書く」力も向上

デジタルコンテンツを活用しながら、「書く」活動を取り入れた授業を行った同教諭だが、昨年5月、他校に先駆けてこの教材を導入するまでは、指導書の内容通りの授業を行っていたという。「準備品もパウチしたカードを一つ一つ取り出して、これは5年の授業に使えるな、と確認しながら封筒に詰めたり。血のにじむような作業だった」と笑う。

引き出しが多いデジタルコンテンツを取り入れることで、授業の幅が一気に広がった。45分授業の中でも中盤にチャンツを入れ、単語の音声を確認できる「単語カード」を用いたカードゲームを仕組んだ。グループでチャンツを用いたネイチャーゲームを行ったところ、普段集中力が途切れがちな児童が、生き生きと取り組む姿がみられた。今回、公開授業でも使用した「中学英語入門」は、児童たちの「やってみたい」という声に応えたものだという。児童の特性や学習状況を見極めながら、最適なコンテンツを組み合わせて、英語に親しめるよう工夫を凝らした。同時に15分授業では、ネーティブのスペルを聞いて覚えた単語のなぞり書きを徹底的に積み重ねた。以前は「dog」のスペルさえ書けなかった児童もいたが、こうした積み重ねの結果、着実に力を付けてきている実感があるという。

■英語が不得手でも前向きに

外国語活動教科化の先行実施に伴い、5、6年生の年間授業時数が70時間となる18年度、同校では週2時間(45分×2)の授業を予定しているという。15分授業の試行で得た成果もあったが、宮澤剛彦校長は「丁寧に進めると時間内に収められない。子供たちの力を養いながら、確実に15分で授業を完了できるかが短時間授業の課題だった」と語る。

また、英語が不得手な教員が担任になった場合に、学校としてどのようにサポートできるかも大きな課題だ。同校長は綿密な年間計画の作成や研修の実施をはじめ、授業で使える簡単なあいさつや呼び掛けを一覧にした「Classroom English」を配布するなど、担任が自信を持って授業に取り組める体制づくりに取り組む。

一方、教師生活のスタートは音楽専科だったという高橋教諭は、「簡単な英語でもうまくいかない部分がある。ただ、決してスマートではないが、困りながらも子供たちと一緒に成長できるような授業が温かいのではないか」と考え臨んでいるという。「ネーティブが発語するデジタルコンテンツは、そうした自分の心強い道具になる。今後も上手に授業に組み入れていきたい」。前向きに授業に取り組む姿がそこにあった。