反転授業を実践 (公財)パナソニック教育財団特別研究指定校 兵庫県篠山市立丹南中学校

予習動画の作り方を説明したワークショップ
予習動画の作り方を説明したワークショップ
予習動画を教員が自作
授業デザインにも変化

教員が教え込む講義型の授業から、生徒が気付き、自ら学ぼうとする意欲を高める支援型の授業への転換――。兵庫県篠山市立丹南中学校(田端俊典校長、生徒325人)は、(公財)パナソニック教育財団の特別研究指定校に選ばれた平成28年から、反転授業の実践に取り組んでいる。

全学年の全教科で、教員がオリジナルの予習動画を自作し、生徒は事前に予習動画を見て、学習イメージを持って授業に臨む。作成した動画数は、この1年半で実に100本以上。11月16日には同校で研究発表会が開かれ、動画作成のワークショップや公開授業などが行われた。

■予習動画作成のコツ

予習動画はiPadなどで使えるアプリ「explain-everything」と、パワーポイントのいずれかで作成する。

教員自ら音声で説明を入れる場合は、ビデオの流し撮りに近い形で作れる「explain-everything」を、音声無しで細かく作り込む場合はパワーポイントを使っている。

そして作成した動画は「Google for Education」を使い、生徒らが同校のホームページからログインして閲覧できるようにアーカイブされている。自宅からアクセスできない生徒にはDVDを渡すなど、全員が予習できるように工夫している。

また、動画は予習だけでなく、授業中のプレゼン資料、復習、特別支援学級や不登校、日本語を母語にしない生徒の学習にも活用しているという。

研究発表会では実際に作成した動画と、その具体的な作成方法が、出席者らに披露された。

これまでに100本以上を作り、さらに現在も作成しているだけあって、当初は手間取った動画作成も、今では1本10~15分で作れるほど習熟してきているという。

プロジェクト開始から中心となって推進してきた木村匡宏教諭は「予習動画作成のコツ」を、「▽長さは1分半から2分ほど。予習として2~3本を見られるくらい▽あえて、説明が不十分な部分を作っておく。『ここを知りたい』と生徒に学習目標を持たせ、主体的な学びに結び付ける」と説明。

「試行錯誤の連続だったが、要点を凝縮して見やすくするなど、取り組みを続けた結果、多くの生徒が見るようになった。いいことも、課題も、次につながる。教員がお互いに支え合いながら、子供のために継続するのが大切」と振り返る。

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■変わる授業デザイン

授業の進め方も大きく変わった。

予習動画導入後の授業は、例えば、本時の目当ての確認→各自で予習動画の確認問題を解き、内容を理解できているかチェック→ペアやグループで教え合い、予習の成果を披露→一斉授業形式で、教員が指導し、不確かな知識を修正、整理し、まとめ直す→生徒の発表→まとめの練習問題→振り返り→自宅などで個々に復習――という進行になった。

授業が効率的になったので、演習問題で再確認し、定着を図る時間もたっぷり取れるようになった。

その成果として、1学期末と2学期中間テストを比較すると、内容が違うので単純比較はできないものの、数学では平均点が47点~60点となり、得点分布も高得点のほうに集まった。

そして理科でも、30~40点台だった生徒25人が15点以上アップするなど、学力下位層と中位層の生徒に著しい伸びが見られた。

予習動画について、生徒からは「次の授業の内容が分かっているから、授業が分かりやすくなった」「予習で分からなかったところを、集中して聞けた」「先生に一方的に教わるのは、つまらないと思うようになってきた。自分で予習して、分かること、分からないことを区別してから授業を聞いたほうが面白いし、内容もよく分かる」「授業が楽しみになった」という感想が出ているという。

公開授業でも、互いに教え合い、いきいきと発表する生徒らの姿が印象的だった。

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■教員の授業力も向上

同校の取り組みの指導に当たった、パナソニック教育財団特別研究指定校アドバイザーの寺嶋浩介大阪教育大学准教授は、反転授業はアクティブ・ラーニングの手法の1つだとして、「生徒は学習時間が増え、教師は指導を減らせる。そして知識の定着に時間を割け、対話的な学習など、生徒の活動場面を取り入れやすくなる。生徒が発表する機会が多くなり、教員とのやり取りや質問が増える」と効果を挙げる。

そして同校の成果を「授業のペースが早くなり、生徒が話し合ったり、考えたりする時間ができ、繰り返せるようになった。対面の授業の進め方が改善されたほか、ICTの活用も充実するようになり、予習動画を授業中にも活用したり、生徒の発表にも利用したりするなどの取り組みが見られるようになった」と高く評価した。

田端校長も「動画での予習を生かした授業デザインを工夫することで、教員の授業力の向上につながった」と評価。

そして、「篠山市教委の新プロジェクトとして、今年度から始動した本校で作成した動画やプリントはもちろん、市内5中学校で作成されたものも全体で共有し、ゆくゆくは市内の教員、学生は誰でも活用できるようにしたい」と展望を語った。