2011年8月4日号掲載 教員の成長には、個々の教員がそれぞれ本を読んでいろいろなことを知り、考えるという側面が重要だと考えられます。一般に、「教員は、採用されたばかりのころには教育に関する本を読むけれど、ある程度現場に慣れてくると本を読まなくなる」というイメージがあります。これは事実なのでしょうか。  私たちの調査では、「あなたは過去1年間、どのぐらい本を読みましたか」という質問を設定して、「教育に関する本」「教育関係以外の本」のおよその冊数をそれぞれ尋ねました。今回は、この結果を分析してみます(関連の表1~3は2面に掲載)。  まず、勤務年数でみて10年刻みで集計してみると、意外なことに教育に関する本をたくさん読んでいるのは、勤務年数が長い層のほうであるという結果が出ました(表1)。年配のほうがよく本を読んでいる、ということです。表は示しませんが、「教育以外の本」についても同様の結果が出ました。  これはどういうことでしょうか。若い教員の読書離れを示しているのでしょうか。あるいは、世間のイメージとは逆に、教員は年齢を経ていくにつれてたくさん読書をし、研鑽を積んでいる、ということなのでしょうか。  そう結論を急いではいけません。この調査のサンプルは、年配層に管理職や主幹教諭をたくさん含んでいます。管理職や主幹教諭が一般教諭よりもたくさん本を読むから、年配層の読書量が多くみえてしまうだけなのかもしれません。  そこで、管理職・主幹教諭と一般教員とを分けて、「教育に関する本」の読書冊数の分布を調べてみました(表2)。  やはり、予想したとおり、管理職・主幹教諭は一般教諭よりもたくさん本を読んでいます。管理職・主幹教諭の31・5%が、過去1年間に教育に関する本を20冊以上読んでいます。10~19冊の人と合わせた割合は64・8%にもなります。主幹教諭以上の人たちは、全般的によく勉強している、ということになるのかもしれません。  ひょっとすると、主幹教諭以上の人たちがたくさん読んでいるのは、昇進試験対策のノウハウ本ばかりなのかもしれないといった邪推も可能ですが、ここではやめておきましょう。「教育以外の本」に関しても、管理職・主幹教諭は一般教諭の年配層に比べてよく読んでいるようですから、単にノウハウ本だけが読まれているのではないようです。  ここで注目しないといけないのは、一般教諭のほうの数字です。勤務年数が20年に満たない層は、やはり少し読書量が少ないようです。勤務年数10年未満では、68・1%もの人たちが、教育に関する本を1年間に10冊未満しか読んでいません。勤務年数10~20年の層でも、59・5%に上ります。若い教員はいろいろな校務や部活動の指導などで走り回っていて、本を読む余裕がないのかもしれません。  勤務年数21~30年の層では、読書量が増えています。10冊以上読む割合が5割を超えています。ベテランになってきて、少し広い視点や深い関心で教育のことを考えてみようとするような時期をむかえている、といえるのかもしれません。  もう一つ面白いのが、勤務年数31~40年の層です。人数が少ないので何ともいえませんが、ほとんど読まない(4冊以下)人たちと、ある程度読む人たち(10~19冊)とに分化していっているのかもしれません。  最後にもう一つ、興味深い表を示します(表3)。管理職等を含めた数字ですが、小学校の教員は「教育に関する本」をたくさん読んでおり、高校の教員は「教育以外の本」をたくさん読んでいることがわかります。教員のスキルや教養の深め方は、学校段階によって異なっていることがわかります。  教員養成・採用・研修の改革は、小学校から高校まで同じではありえない。それぞれの学校段階に応じた柔軟なものでなければならないということを述べて、調査結果についての紹介を終わります。  (担当・広田照幸日本大学教授、笹本佳男日本大学大学院院生)▼連載「教師力を探る」一覧へ

公式SNS

7,340ファンいいね
34,297フォロワーフォロー