「グローバルに活躍したい!」その思いを育む part1【座談会】

「グローバルに活躍したい! 大学生がそう思った動機づけとプロセスから、グローバル人材育成を考える」をテーマに、座談会を行った――。
(司会・教育新聞編集委員 池田康文)


 

自分が何者かを知って行動 文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクト プロジェクトディレクター 船橋 力
自分が何者かを知って行動
文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクト
プロジェクトディレクター
船橋 力

司会 平野さんと細越さんは「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」で海外に行きました。きっかけなどを。

平野 小さい頃から読書が大好きで、小学校の図書館と地域の小さな図書館に通い詰めました。全部読み終え、次に何かないかと探したときジャーナル誌に出会い、銃を持って戦っている子どもの話を読みました。子どもたちは、お父さんもお母さんも厳しい環境でつらい中にあるから、自分は大人になったらその環境を変えたいけれど、自分には教育を受ける機会がないし、それを許してくれる大人もいない。これを読んで小学生なりにショックを受けました。小4、小5くらいでした。

司会 4、5年生で少年兵の問題に気付くとは。

平野 公文教室で英語の勉強を続け、進んでいくと、文法だけでなく、リンカーンなどの偉人伝を読むようになりました。その言葉にすごく影響を受け、世界を見ている人たちの言葉をもっと知りたいと思うようになり、海外に興味を持つようになりました。

船橋 何で英語を。

平野 きっかけは、海外出張によく行っていた父です。京都の実家で日本酒を売っていて、お祭りのときに実家を手伝い、海外からの観光客に英語で説明していました。その姿がすごく格好よくてそれで英語を勉強しようと思いました。通った公文教室の先生は厳しいので有名でした。私は泣き虫だったので、母が厳しい場で鍛えなさいと。

現地を自分の目でよく見る 東京農業大学国際食糧情報学部 国際農業開発学科(27年度卒) 細越 雄太
現地を自分の目でよく見る
東京農業大学国際食糧情報学部
国際農業開発学科(27年度卒)
細越 雄太

司会 細越さんは。

細越 中2のとき飢餓問題を学ぶ機会がありました。社会科や総合的な学習や道徳の授業で深めていくと、社会の問題を見てみようとなり、先生から出た宿題から、まず平和を切り口に自分にとっての平和を考えました。食べるのが好きで、食べているときは幸せだし、この幸せという感情が平和なのではと思いました。飢餓を抱える国や地域には食べられるものがないので、最初は食糧を提供する思いが強かったです。けれども、食の根源は何だろうと考えていくと農業に突き当たりました。それなら、農業改善から飢餓問題の解決を探っていけるのではないか。それが、海外に興味を持ったきっかけです。そのためにはどんな仕事があるのかと考え、JICAや国連が浮かび上がり、青年海外協力隊員になるにはどうすればいいか、そのためには農業を学ぼう。こうして中2のときに、志望大学と志望学科が決まりました。

司会 「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」では、このような思いを持っている若者をどのように支援しているのですか。

船橋 「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」は、平成25年6月に日本再興戦略で決まりました。意欲ある若者の海外留学を支援しています。日本代表との名のもとに2020年までに1万人の派遣留学生とさまざまな民間企業から200億円の寄附金を集めるという目標の下、平成26年にスタートしました。コースは6つあり、5つが30歳以下の大学生、1つが高校生対象です。学生対象は「理系、複合・融合系人材」「新興国」「世界トップレベル大学等」「多様性人材」「地域人材」。座学だけでなく、自分で企画して実践活動を行います。また行きっぱなしにならないよう、手厚い事前事後の研修、海外に行っている間のメンタリングがあります。奨学金が充実していて、全額給付型です。国費留学の倍近い額を出し、留学中に金銭上で困らず、いろいろな活動をしてほしいとの意図があります。加えて、コミュニティと呼んでいる、企業と大学と学生同士が交流する場を提供しています。学生に与えられるミッションは3つあります。1つは将来のグローバル人材、グローバルリーダーになろうということ。2つ目がアンバサダーとして、留学中に日本のことを発信する活動を行う。3つ目がエヴァンジェリストという、帰国後に留学のよさなどを伝えていく役割です。

司会 教育に携わる民間企業の立場から、世界にまなざしを向けることについて考えを。

中江 話を聞いていて、昨年11月に行われたトビタテ第1期生の成果報告会を思い出しました。実にインパクトがありました。みんな初対面で、彼らの過去は知らないのですが、明らかに、この人たちは本当に成長したのだろうと強く感じました。平野さんには読書とお父さん、細越さんには学校の先生がきっかけになっています。学びを深めていく環境がこうして提供されたのだと思います。それと、読み書き計算の基礎学力は、やはり、生きていくための道具として絶対に必要だと思います。なかでも2人が、本を読む子、自分で考えていく子に育ったのが決定的に重要です。

公文教室では今、英語を学ぶ子どもが増えています。平野さんには教室の中高生や保護者に、海外での体験などを話してもらいました。それは、英語を学ぶモチベーションを高める大きな機会となりました。その話が忘れられずに育っていく子が、きっといるに違いありません。そんな環境を提供していくのが大人の役割だと思います。

司会 2人の話に戻り、留学先では何を学び、どんな体験をしましたか。

平野 ロシア・サンクトペテルグルク大学に行き、ロシア語とジャーナリズムを学びました。そこには、いろいろな国から多様な社会経験を積んできた人たちがいて、勉学はまさに世界水準でした。その意味は大きいですが、私は人間的な成長や考え方、価値観のほうが大きく影響を受けたと思います。あちらに行って受講しようと計画していた講義が突然なくなるハプニングもありましたが、それに柔軟に対応していくのも、よい体験でした。自分の意見を言ったり自身をアピールしたりするチャンスは、待っていてもきません。自分で作り出さないと挑戦する機会さえこないのを、すごく感じました。何回も失敗しましたが、失敗はいけないことではありません。日本人は、なかなか自分から意見が言えないのですが、逆に、最後に全員の意見をまとめ提案したとき、みんなが驚いたり喜んだりしました。空気を読むのは、意外に日本人の強みなのではと気付きました。

細越 私はベトナム、タンザニア、フランス、アメリカに行きました。強く思ったのは、ステレオタイプの怖さです。飢餓問題がたいへんだと考えてネットで検索すると、深刻な情報しか入ってきません。でも実際にタンザニアに行ったら、違っていました。ネットから得た情報はステレオタイプのものでした。現地に行って本当によかったと思います。農家に泊まり農場を手伝いました。食料はたくさんありました。足りないのは流通システムや収穫物を保存する方法でした。自分の中で行く前と行った後で、大きな変化がありました。

司会 現場に行っての気付きや人間的な成長は大きいですね。2人の話を聞いていかがですか。

中江 私の時代には、大学を卒業し、大企業に就職してといった方程式がありました。ところが、バブル崩壊から価値観が大きく変わり多様化が進みました。今では、価値観の変化に対応する、自ら学び考え行動することの必要性が高まっています。人は、試練を乗り越えたときに成長します。公文の日々の学習の中でも、新たな経験をし、小さな試練を乗り越え、間違えても自分の力で修正していく経験をくり返すことで、確かな力が身に付いていきます。留学はまさにそういった機会となります。自ら考え、行動する人間にしてくれます。帰国した人たちは、なるほど強くなっていくのかと感じました。

座談会 「グローバルに活躍したい!」その思いを育む part2に続く