ものづくり・地域貢献柱に人づくり 【技能検定】

佐賀県立唐津工業高校建築科
ものづくりマイスターの指導を受ける生徒ら
ものづくりマイスターの指導を受ける生徒ら
全1年生が毎年挑戦
建築大工技能士3級試験に

佐賀県立唐津工業高校(池田積校長、生徒465人)は、「ものづくりによる人づくり」「部活動による人づくり」を教育目標に掲げる。その建築科では、平成26年度から1年生全員が、国家検定の建築大工技能士3級試験に毎年挑戦している。初年度は、全員合格を達成している。そうした成果には、同校の日々の取り組みと、「ものづくりマイスター派遣制度」が貢献している。

同校は、機械、電気、土木、建築の各科で構成。各科各学年4クラスの小規模校。そこで独自性を打ち出すため、ものづくりに特化した教育と、人格形成を大きな目標に据える。中でも建築科は、平成9年度に創設された、同校では比較的に新しい学科だ。

自身も同校の卒業生という池田校長は、「建築科は後発である分、卒業生が活躍する場を作ってあげたいと思った。そこで、例えば老朽化した水車の代わりの新しい水車を製作して寄贈するなど、まず地域貢献を始めた。その結果、地域からの信頼が厚くなり、それが生徒の自信につながった。そして、より自信をつけさせるために、全員で資格取得という運びになった」と、全員受検のきっかけを語り、後輩に当たる生徒たちの成長を温かく見守る。

3級試験は、建築大工技能士に必要な基礎知識と技術を問う検定で、実技と筆記を行う。入学したばかりの1年生には、のみやかんなの使い方は、まだおぼつかない。そんな生徒らを熱心に指導して知識と技能を習得させ、合格させた立役者が、建築科実習助手の青木康将さんだ。

青木さんは自らの指導力をより高めようと、1級技能士を取得。さらにオリジナル教材として、3級試験の実技課題を一通り自分で行って動画撮影し、要所ごとに編集。生徒が随時、青木さんのやり方をタブレットPCなどで見て復習できるようにするなど、その熱心な指導ぶりに定評がある。

青木さんは「生徒の熱意に応えるために、指導法をいろいろと工夫している。ものづくりマイスター制度の活用も、熟練した職人の技能を間近で見て指導が受けられれば、きっと生徒に有益だろうと思った」と決めたという。

「ものづくりマイスター制度」は、厚労省が25年度に創設。高度な技能を持ったものづくりマイスターが、技能競技大会の競技課題などを活用し、中小企業や工業高校等で広く若年技能者への実技指導を行い、効果的な技能の継承や後継者の育成を行う。同校では同年度に、希望者だけがマイスターから指導を受ける形でスタート。

翌年度からは、3級試験の全員受検に合わせて、1年生全員がマイスターの指導を受けるようになった。

同校を訪れるマイスターは、1級技能士の林田俊彦さんはじめ5人で、全員が熟練した大工。

40代から80代までと年齢層は幅広いが、全員が優しく、丁寧に生徒を指導してくれるという。

実技の内容ごとに担当を変え、指導に訪れるのは1人約10回。熟練の技を見る機会は、生徒の技能向上に大きく寄与している。

建築科2年生吉岡哲平さんの将来の夢は大工。「自分はのこがうまくなかったが、マイスターに丁寧に教えてもらって、まっすぐに引けるようになった。同じのこを使っても、マイスターは、のこが木材にどんどん入っていく。スムーズなのこの扱いを見て、本当にすごいと感動し、とても勉強になった」と目を輝かせる。

同じく2年生の、川添連さんの将来の夢は、主に建築物の設計に携わる建築士。「自分でうまくできない作業も、マイスターのやり方を見ると改善点がよく分かった。熟練した方の作業を目の前で見られたのは、将来の設計の仕事に生きてくると思う」と振り返る。

2人とも、青木さんの動画を見てイメージトレーニングし、実際に行ってみて、至らないところを青木さんの指導や、マイスターのチェックを受けて上達させていったという。マイスターの指導と、青木さんの日々の授業は、生徒らの試験合格や夢の実現に、着実に結びついているようだ。

池田校長は「ものづくり、地域との連携・貢献を通して、人づくりの効果が見えてきた。マスコミに取り上げられる機会が増え、意欲のある入学志望者が増えてきている。『将来を見据えて専門的なことを学びたい』という生徒のニーズに応えられていると思う。今後は、生徒がより主体的に発案し、取り組むような流れにしていきたい」と展望を語った。