廃炉作業の進捗と労働環境の改善を実感

福島第一原子力発電所1号機
福島第一原子力発電所1号機
教員対象に福島第一原子力発電所の視察会
エコテクみらい研究所とプラスエムが主催

今回の視察会では、事故のあった福島第一原子力発電所構内の作業状況を実際に見学するとともに、被災地の小学校の校長との意見交換を行った。

参加者からは、「原子炉建屋の間近まで行って廃炉作業の進捗(しんちょく)を理解できた」「報道されていることよりも、実際に自分の目で見て聞くことの大切さを感じた」などの感想が寄せられた。

視察会に同行した社会科教育の北俊夫国士舘大学教授と、理科教育の船尾聖帝京平成大学教授のお二人に、視察の印象や教育関係者に伝えたいこと等を聞いた。(敬称略)


――今回の視察会で最も印象に残ったことは。
北俊夫国士舘大学教授 「子供たち自身の問題として考えさせる機会を」
北俊夫国士舘大学教授
「子供たち自身の問題として考えさせる機会を」

:事故から6年以上が経過した現場の状況について、メディアを通した理解とは異なった現実を目の当たりにすることができた。例えば、高濃度汚染水の浄化が2年前に完了していることや、構内の除染が進み、現在では95%のエリアでの作業が一般作業服でできることなど、廃炉に向けた作業が一歩一歩着実に進行していることを実感した。また、今回の事故を契機に、これまで遭遇したことのない課題の解決に関する技術の研究開発が進んでいることも知った。

廃炉に向けた道のりは長いものの、現場の方々の前向きに取り組んでいる姿勢がとても印象的だった。

船尾:やはり、福島第一原子力発電所の事故現場を、じかに自分の目で見られたことが貴重な体験になった。津波のエネルギーの大きさや被害の大きさに驚く一方で、事故当時は過酷だった現場の作業環境が大幅に改善されていることが理解できた。東日本大震災の風化や福島への風評を防ぐためにも、廃炉作業の進捗や福島の復興状況を学校現場でも正しく伝えていくことが、これからの日本のエネルギー教育における大切な要素であることを痛感した。

――地元の小学校の校長先生との意見交換で感じたことは。
船尾聖帝京平成大学教授 「教師が現実を受け止める感覚を持つのが重要」
船尾聖帝京平成大学教授
「教師が現実を受け止める感覚を持つのが重要」

船尾:同じ福島であっても震災の影響はさまざまであり、現地で校長としてリーダーシップを発揮することの難しさを強く感じた。特に、原子力発電は地元の教育現場での扱いが難しい問題であるが、その問題に正対することで、子供たちの主体性とふるさとへの愛着が育っていく、という話に共感した。被災地で子供たちを指導する教員にとって、目の前にある現実から目を背けて暮らしていくことはできない。この現実に対して、未来を担う子供たちに適切な考えや判断する力を育てることが、今教育としてあるべき使命だと考える。

:今なお4万人近くの方が県外への避難を強いられていること、双葉郡内の小・中学校が県内の各市町に避難していること、浪江町の小学校4校、中学校2校が現在も臨時休業中であることなどを知り、学校教育が日常に戻り、町のにぎわいが元のようになるには、まだまだ時間を要するのを感じた。同時に、広野町の小・中学校で実施している防災教育や放射線教育、エネルギー教育について関心を持った。

――視察会に参加した先生方に期待することは。
東京電力社員から説明を聞く参加者
東京電力社員から説明を聞く参加者

船尾:今回の視察会での経験や感じたことを、まずは「自校の子供たちや先生方に伝えたい」との思いを持った参加者が多かったようだ。学校便り等での紹介もそのひとつだ。また、理科の授業の中でどのように活用していくかを考えていく必要がある。

:今回の参加者は校長が多かったが、視察を通して感じたことや学んだことを、ありのまま校内や研究会などの先生方に伝えてほしい。視察の内容を教材化して、社会科や総合的な学習の時間などに活用することも考えてほしい。その際、保護者、地域住民の価値観が多様化していることなどを考慮しながら、慎重に検討することが必要だ。

――全国の先生方へのメッセージをお願いしたい。

:福島第一原子力発電所での廃炉作業がどのように進捗しているのかに関心を持っている先生方も多いと思う。現地視察等は簡単にはできないが、東京電力ホールディングスのホームページには、廃炉作業の進捗に関する一般市民向けの分かりやすい資料や動画が多数掲載されており、先生方にも参考になるのではないか。

子供たちや保護者の中には、放射線と放射能の違いなど、必ずしも正しい知識を持っていないことが多いと聞いており、各学校で放射線教育を進め、何よりも正しい知識を指導してほしい。また、エネルギーや地球環境の問題について当面大切なことや必要なことは何か、これらの問題を将来的にどのように考えたらよいかなど、子供たちに自らの問題として考えさせる機会を設けてはどうか。その際重要なのは、各学校の子供の実態や地域の実情などを踏まえて実施することだ。

船尾:エネルギー教育を実践していく上で、福島第一原子力発電所の廃炉作業や福島復興の現状を正しく認識させることが大切だ。そのためには、教員自身が現実を受け止める感覚を持つのがとても重要だ。実際に原子力発電所で働いている人や、地元の先生方と話せる研修の機会を持つことで、子供たちに伝える時のインパクトが違ってくる。教師や子供たちにじかに話を聞く機会を作るとともに、エネルギーの在り方について自ら考え、判断し、実践していく教育が大切だ。

(株)プラスエム