インフルエンザ、ノロウイルスなど冬本番を前に注意喚起!【感染症特集】


インフルエンザ・ノロウイルスなど、感染症が流行しやすい学校現場――。この時期は感染症対策が急務となっています。 今回は、感染症の基礎知識と予防・対策を特集する。国の取り組みや対策方針を紹介するほか、専門家がウイルスや危機管理の基礎知識を解説。学校現場で取り組むべき衛生管理や健康教育について、最前線で働く養護教諭の事例も紹介。

清潔習慣の確立と感染症予防 学校薬剤師による手洗い指導から
全国養護教諭連絡協議会常務理事 秋田県秋田市立下浜小学校養護教諭 齋藤 寛子

■はじめに
今年も感染症の流行期を迎える季節となりました。この時期は特に、インフルエンザの流行を最小にとどめたい、ノロウイルスは絶対に流行させないと願いながら感染症予防の徹底を図ります。本校も同様に、この時期には予防指導に力を入れますが、流行期に限らず、通年および6年間を見通した感染症予防の計画的な指導に取り組んでいます。
■本校の目標
本校の学校教育目標「夢をもち、心豊かで、たくましい子どもの育成」を達成するため、保健目標を「自分の体に関心をもち、健康な生活を送ろうとする子どもの育成」と設定しています。
「子どもの心身の健康問題を早期に発見し、校内外の関係者との連携を図り問題解決にあたる」「健康教育の充実を図る」を重点事項にして、保健活動を推進しています。
「健康な生活を送るために病気を予防し、健康の保持増進を図る」ことを狙い、健康生活習慣の確立のために基本的な生活習慣を身に付けることを大切にしています。
中でも清潔習慣の指導は、「校内外の関係者との連携を図りながら健康教育を充実させること」にポイントを置き、全教職員が共通理解をして、取り組んでいます。
■本校の指導内容

本校では、「感染症の予防が病気の予防につながる」と考え、通年で、「清潔習慣を身に付ける指導」に力を入れているので、感染症の流行期も慌てることなく、指導が計画的に進められます。

また、清潔習慣を1年生でしっかりと身に付けることで、2年生以降の指導を効果的に行うことができると考え、校外の関係者とも協働して指導を行っています。

入学前の就学時健康診断では、学校医から予防接種状況確認と、その必要性を指導してもらいます。

さらに、新入生保護者説明会で、担当教諭と養護教諭から、基本的生活習慣を身に付けること、特に清潔習慣については細かく具体的に説明をします。

このように、入学前から保護者のご理解とご協力をいただけるよう働きかけます。

そして、入学後は、清潔習慣を身に付けて進んで実践できるよう、「身の回りの清潔・トイレの使い方・うがい・手洗い・食後の歯みがき等々」の指導を学級担任が中心となり行います。

年間計画に沿って保健学習と保健指導を進め、朝の健康観察の時間での整容検査、日常的な声掛け(うがい・手洗い・歯みがき等)、児童委員会による日常・集会活動、学校だより・学級だより・保健だよりによる啓発活動、校外の関係者による保健指導等々、機会を捉えて着実に指導を重ねています。

■学校薬剤師による指導
1年生から手洗いについて保健指導し、感染症を防いでいる
1年生から手洗いについて保健指導し、感染症を防いでいる

中でも、感染症流行期前に行う学校薬剤師による1年生への保健指導は、子供たちの清潔習慣の実践意欲を高める機会となっています。

感染症は、手を介して体内に侵入するということから、「手洗い名人になろう~手洗いで病気を予防~」というテーマで学校薬剤師が保健指導を行います。

めあてを「正しい手洗いを覚えて、病気を予防しよう」とし、手洗いチェッカーを用いて、子供たちが自分の手の汚れを実感し、手洗いの必要性と正しい手洗いの仕方を学校薬剤師から学びます。

子供たちは、予想以上の汚れに驚き、正しい手洗いを習得するために質問をしたり、時間をかけて丁寧に洗ったり、チェッカーで何回も汚れを確認しながら手を洗ったりします。

専門的な知識と技能を持ち合わせた学校薬剤師から体験を通して学ぶことにより、1年生なりに知識や技能を習得し、ひいては子供たちの学ぶ意欲と実践意欲が育まれます。

また、指導後は、学級担任が学習したことを感染症流行期の予防につなげることができるという、とても効果的な指導の機会となっています。

さらに、保健だよりだけではなく、学校・学級だよりでも指導内容や子供たちの様子を知らせ、家庭でも継続した実践ができるように働き掛けをしています。

学校薬剤師による1年生に対する指導は、各学年での指導に活用でき、さらに発達段階に応じた内容を付け加えることで、より効果的な指導ができます。

「清潔習慣を身に付ける」ことは、子供たち自らが実践できる感染症予防につながります。

子供たちの手で感染症を予防し、自分の健康は自分で守ることができるように、1年生の早い時期から「点ではなく線としての指導」を、校内外の関係者と協働した「チーム」で、今後も計画的に進めていきたいと思います。

インフルエンザやノロウイルス 学校現場における予防対策
国立感染症研究所 感染症疫学センター第2室長 砂川 富正

■はじめに

平成29年も11月を迎え、インフルエンザによる学級閉鎖のニュースなどを見聞きするようになりました。確かに、感染症に関する動向の推移を見ていると、全国の医療機関を受診し、インフルエンザと診断される患者数は、明らかに増加の傾向をたどっています。

この冬の流行は、どのようなタイプのインフルエンザウイルスが主体となるのか、現段階では不明ですが、学校現場では備えていかねばなりません。

また、冬になると、インフルエンザと並んでノロウイルスをはじめとする感染性胃腸炎が流行し、これも学校現場では問題となります。

これらの感染症に対して、今日は解説を試みたいと思います。

■インフルエンザの豆知識

季節性のインフルエンザは、北半球では12~3月などの冬の時期を中心に毎年流行を繰り返すもので(沖縄県を含む亜熱帯~熱帯地域では夏の流行もあります)、現在、ヒトの間で流行しているタイプはA型とB型です。

新型インフルエンザが話題になることがありますが、元々、鳥や豚のインフルエンザが変異してヒトにも感染するようになったものです。

多くのヒトが免疫を持っていないため、発生すると世界的大流行(パンデミック)を起こして大きな被害をもたらすことがあります。現在のA型の季節性インフルエンザは元々は新型インフルエンザでした。

インフルエンザに感染すると、およそ1~3日の潜伏期間のあと、典型的には38℃以上の高熱や全身の痛みなどが現れます。インフルエンザの診断に迅速検査が補助的に用いられることがありますが、発症後12時間ころまでは陽性に出ないことがあります。

水分がとれない(尿が出ない)、呼吸が苦しい、意識状態がおかしい、けいれんするなどの症状(乳幼児ではグッタリしていることが重症化を疑わせる徴候)があれば、重症化している危険がありますので、受診を急ぎましょう。なお、重症化リスクが高い人は、一般には高齢者、妊婦、乳幼児となりますが、若い方でも慢性の呼吸器や心臓、腎臓の持病がある人は要注意です。

■インフルエンザへの対応は総力戦で

インフルエンザはどのように感染するのでしょうか。それを知っていると、インフルエンザへの感染予防が上手にできます。

インフルエンザに感染した人がくしゃみをしたり、咳をすると、口から飛び出す分泌物(飛まつと言います)には大量のインフルエンザウイルスが含まれているので、吸い込まないようにしましょう。

感染性の飛まつが付着した人の手のひら・指を無意識に自分の顔に近付けてしまうと、感染のリスクが高まりますので、日ごろからの手洗いがいかに重要であるかについては、特に強調したいところです。

また効果的なのは、かかってしまった方がマスクをすること、人に向けて咳をしないこと、咳をする際はティッシュなどに向けてしてもらい、すぐに捨ててもらうことなどです。家族や周りの人が感染して重症化することがありますので、かかった方の協力も重要です。以上は学校における衛生教育の中でも、伝えていただくことができると思います。

また、流行前にインフルエンザワクチンの接種を受けることは重要ですが(効果は接種後2週間程度から約5カ月ごろまでとされます)、残念ながらインフルエンザワクチンには感染を完全に予防する効果はなく、むしろ発症しても重症化や死亡を防ぐことに一定の効果があるものと考えてよいでしょう。

その観点からも、ワクチンのみならず、手洗いの重要性や、体調を良好に保つことなどの総力戦でインフルエンザに対応してほしいと思います。

■ノロウイルスの予防対策は、まめな手洗いと的確な吐物の処理で

ノロウイルスは汚染された食品を食べて発症することもありますが、家庭や集団生活を送る人の間では、感染した人(発症時は嘔吐や下痢を起こします)から人への感染が多くみられます。

手洗いは最も有効な感染予防方法ですので、インフルエンザ対策も併せて重要性を教育してください。

有症者の糞便や吐物には大量のウイルスが含まれており、その処理には注意すべきポイントがありますので、衛生担当者は保健所等にお問い合わせください。また、学校給食にノロウイルスが入り込むと大きな問題となりますので、給食担当者は学校給食調理従事者研修マニュアルを順守することが重要となります。

感染症を拡大させないために
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 健康教育調査官 小出 彰宏

■感染症の発生

例年、冬になるとインフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行する。感染症が発生するためには、(1)その原因となる病原体の存在(2)病原体が宿主(ヒト)に伝播する感染経路(3)病原体の伝播を受けた宿主(ヒト)に感受性があること――が必要となる。

■関連規定

学校は、児童生徒等が集団生活を営む場であり、感染症が発生した場合、大きな影響を及ぼすことになる。

そのため、学校保健安全法では、感染症の拡大防止を目的として、第19条において「校長は、感染症にかかっており、かかっている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」と規定されている。

出席停止期間は感染症の種類等に応じて規定されており、例えば、インフルエンザでは出席停止期間を「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあっては、三日)を経過するまで」とされている(学校保健安全法施行規則第19条)。

一方、ノロウイルスには出席停止期間は規定されておらず、各地域、学校における流行の態様等を考慮の上で判断することになっており、必ず出席停止を行うべきというものではない。

なお、校長が出席停止を指示したときは、その旨を学校の設置者に報告しなければならず(学校保健安全法施行令第7条)、学校の設置者は、必要に応じて臨時に学校の全部または一部の休業を行うことができる(学校保健安全法第20条)。

また、学校の設置者は、出席停止が行われた場合や学校の休業を行った場合には保健所に連絡しなければならない(学校保健安全法第18条及び学校保健安全法施行令第5条)。

なお、学校保健安全法第31条において、学校の設置者は、学校保健安全法に基づき処理すべき事務を校長に委任することができる規定とされており、校長が臨時休業や保健所との連絡を行う場合もある。

■感染経路

学校で感染症を拡大させないためには、感染経路を遮断することに心掛けることも重要である。感染経路として、空気感染、飛沫感染、接触感染、経口感染がある。

「空気感染」は、感染している人が咳やくしゃみ、会話をした際に、口や鼻から飛散した病原体がエアロゾル(空気中に浮遊する病原体を含む粒子)化し、感染性を保ったまま空気の流れによって拡散することで、同じ空間にいる人がそれを吸い込んで感染する。

「飛沫感染」は感染している人が咳やくしゃみをした際に、口や鼻から病原体が多く含まれた小さな水滴が放出され、それを近くにいる人が吸い込むと感染する。

「接触感染」は、感染している人や物に触れることにより感染するが、通常、病原体の付着した手で口、鼻、目を触ることによって病原体が体内に侵入して感染が成立する。

「経口感染」は、汚染された食物や手を介して口に入った物などからの感染であり、例えばノロウイルスや腸管出血性大腸菌など、便中に排出される病原体が、便器やトイレのドアノブを触った手を通して経口感染する。

感染経路を遮断するためには、手洗い、咳・くしゃみの対応、吐物・下痢などの対応および清掃などが大切である。

特に、手洗いや咳・くしゃみの対応は児童生徒等が適切な方法を身に付けなければ、感染の拡大は防げない。

また、吐物・下痢などの対応および清掃については、教職員がそれらの方法を正しく理解していなければならない。

さらに、冬は教室内の換気が十分に行われず、空気も乾燥していることから、感染しやすい環境になっている。教室の窓を開け、新鮮な空気を取り込むことを心掛けないといけない。

■連携して予防を

感染症予防の方法や適切な環境衛生の維持管理など、学校における保健管理に関する専門的事項の指導は、学校医や学校薬剤師の職務(学校保健安全法第23条)であることから、ぜひ学校医や学校薬剤師と連携して、感染症の予防に取り組んでいただきたい。

なお、学校における感染症対策に関する指導参考資料として「学校において予防すべき感染症の解説」が文科省から出ており、文科省のホームページで閲覧できるので参考にしていただきたい。